及川 喜之 セールスフォース・ドットコム CTO
及川 喜之 セールスフォース・ドットコム CTO
写真・辻 牧子

 2007年9月にPaaS(Platform as a Service)の「Force.com」を開始した。当社のSFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)といったアプリケーションが稼働しているプラットフォームを開放するものだ。当社のクラウド上でユーザーが様々なアプリケーションを開発し,動かせるようになった。

 これまでとは全く異なるアプリケーションを作ることもできる。例えば,ユーザー・インタフェース開発機能の「Visualforce」を使えば,iPhoneのSafari上でWebアプリケーションを動かすといったことが可能になる。

 クラウドで世のアプリケーションの大部分はカバーできるはずだ。できない分野を挙げるとすれば,リアルタイムOSとか,1秒間に何万回もの極端に多くのトランザクションを処理するような特殊な分野くらいではないか。

開発環境も優れている

 使えるサービスの品ぞろえが進んできただけでなく,開発環境も優れたものを用意している。下手な環境で開発すると,データの連携に苦労する。「Salesforce」の場合,データベースが一つなので,統合や連携の際にデータベースに手を入れる必要がない。

 当社のクラウドは,アプリケーション,ユーザー・インタフェース,ロジック,インテグレーション,データベース,インフラの6層に分かれている。例えば,取引先データとひも付けする場合,触る必要があるのはインテグレーション層から上だけ。データベース層とインフラ層には手を加えなくてよい。

 また,このような追加開発を行うと,ハードウエア・リソースが足りなくなることが多い。だが,クラウド上ではキャパシティ・プランニングの心配をする必要がない。

 サードパーティが提供するForce.com上のサービスも充実してきた。ERPベンダーの米CODAが会計機能を構築したほか,米Informaticaや米Tibco,米Pervasive Softwareがデータ連携,データ統合のためのアダプタ機能を提供している。オンデマンド・サービスのマーケットプレイスとして運営しているAppExchangeに参画するパートナーやISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)も,ゆっくりとだが増えている。

 SaaS(Software as a Service)を使う場合でも,何らかのSI要求は出てくるものだ。当社が公開するAPIや,これらのサービス群が役立つはずだ。

隠し技は存在しない

 クラウドの世界では,ユーザーはただサービスを使えばよい。だから,Salesforce.comはサービスが稼働しているシステムの構成などは公開しない。

 ただし,サービスとしての仕様は徹底して公開する。隠し技は存在しない。スタンダードにも極力沿うようにしている。例えば,Force.comではAjax Toolkit,Flex Toolkitなどを用意している。

■変更履歴
タイトルで及川氏の肩書きを「CIO」としていましたが,「CTO」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/11/17 10:40]