「Google App Engine」とは,米Googleが提供しているWebアプリケーション開発/実行環境。2008年5月28日からは,ユーザー登録をすれば誰でも使えるようになった。その概要を紹介し,メリット,デメリットを説明する。

 Google App Engineは,面倒な準備無しに,無料で使えるWebアプリケーション開発/実行環境である。Googleが運用している膨大なサーバー群と,Googleのサービス基盤となっている分散ファイルシステム「GFS(Google File System)」やデータベース管理システム「BigTable」を利用して,独自のWebアプリケーションを作成,公開できる。

 ただし,GFSやBigTableを直接扱えるわけではない。あらかじめ用意されているプログラミング言語「Python」の実行環境とライブラリからGFSやBigTableを利用する(図1)。

図1●Google App Engineの概要
図1●Google App Engineの概要
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使用権に制限がある

表1●1日当たり消費できるリソースの上限
表1●1日当たり消費できるリソースの上限

 無料で使える半面,制限もある。ストレージやプロセッサの使用時間などの利用に制限がかかっているのだ。登録ユーザー1人当たりに割り当てられるストレージ容量は500Mバイト。公開できるアプリケーションの数は10個まで。一つのアプリケーション当たりの最大ファイル数は1000個で,ファイル1個当たりのサイズは1Mバイトである。

 1日ごとの制限もある(表1)。アプリケーションを動かし始めると、この割り当て数を消費していく。上限まで達するとアプリケーションの処理が止まる。ただし,リソースの消費量は1日経てばまた0に戻り,翌日からまた使えるようになる。

 Googleは2008年中に,この制限を上回るようなユーザー向けに,ハードウエアやネットワークのリソースを追加販売する予定としている。1時間当たりのプロセッサ・コアの使用料を0.1?0.12ドル,追加ストレージ1Gバイト当たり月額0.15?0.18ドルなどの数字を予想価格としている。

今のところ開発言語はPythonのみ

 Google App Engine上のアプリケーションを作成するには,ユーザー登録をした後に,開発環境「Google App Engine SDK」をダウンロードしてインストールする。このSDKを利用するには,プログラミング言語Pythonの実行環境をインストールしておく必要がある。また,画像を操作するライブラリ「Images API」を利用するには,Pythonの画像処理用ライブラリ「PIL(Python Image Library)」も必要だ。

 SDKをインストールすると,Google App Engineの動作をシミュレートするテスト用サーバーと,開発したアプリケーションをアップロードするツールが使えるようになる。パソコン上でプログラムを記述し,テスト用サーバーで動作を確認してアップロードすれば,アプリケーションがGoogleのインフラで動き始め,インターネットからアクセスできるようになる。