クラウド黎明期の今は,サーバーなどのインフラや,サービスレベル管理といったシステム運用などから着手することになる。その少し先になると,クラウド環境をビジネスに有効活用するための戦略立案が重要になる。IBMはクラウドの生かし方を提案する。
単に「日本にも巨大なクラウドを作ればよい」という話ではない。それをどう生かすかのアイデアが必要だ。IBMはそのためのコンサルティングで力を発揮できる。
さらに,クラウドという社会インフラが整備されると,世の中の仕組みが変わり始めるだろう。そのとき,消える役割と新しく発生する役割がある。そこを明確に認識できない企業は成長しない。ここの部分でも,IBMは役に立つだろう。
もちろんIBM単独でやるとは限らない。他社とコンソーシアムを組んだり企業買収したり,選択肢は多い。
IT業界だけの問題ではない
「クラウド・コンピューティング」がバズワードだとする意見もあるが,そうは思わない。新しい社会インフラとして,ビジネスのやり方や社会サービスの産業構造などを大きく変える可能性があるからだ。
伸縮自在で,サービスレベルを保証する仕組みを備えたインフラが使えたら,人間は「やりたいこと」や「やるべきこと」に集中できる。今はまだSaaSの延長だとか,Amazon EC2や同S3といったイメージが強いが,そのもたらす意味はもっと広い。
だからこそ黎明期の今,IT業界だけでなく色々な立場の人たちが知恵を絞るべきだと考える。そこで2008年8月末に,各界の識者の協力を得て「天城サミット」という会議を開いた。そこで「クラウド・コンピューティングの本質は何か」「パラダイム・シフトはどう進むか」「障害はなにか」といったことを議論した。日本におけるクラウド・コンピューティング・イニシアティブ的な動きの中核になればと思っている。
確かに,クラウド・コンピューティングは全く新しいコンセプトというわけではない。そこで使われる様々な技術は,業界各社が以前から取り組んできたものである。
IBMの例で言えば,SOA部隊の中に「コンポーネント・ビジネス・モデリング」というコンサルティング・サービス部門がある。ここではコンサルティング業務を通じて,ビジネス・プロセスをどうコンポーネント化してどう組み合わせるべきか,というノウハウを蓄積し続けている。それをまた顧客に提供している。これがクラウド時代に武器になるだろう。
もう一つ大事なことは,サービスレベルの保証など,顧客が安心できる環境を実現することだ。非常に難しい分野だが,最近の10年ほどの間に大きく進歩し,必要な仕組みが整ってきた。現在,それらをクラウド環境でどう使うかというマッピングの作業を着々と進めている。