阪急百貨店と阪神百貨店を傘下に持つ持株会社エイチ・ツー・オー リテイリングは、2007年10月、両百貨店グループが経営統合して誕生した。
両百貨店のシステム統合を指揮するのは、エイチ・ツー・オー リテイリングのCIO（最高情報責任者）を務める取締役執行役員の森忠嗣経営企画室長だ。
2008年4月からシステム統合作業を進めてきた。同年11月に基幹システムを統合し、主なシステムの統合は完了する。具体的には、2008年4月にデータセンターを移転し、人事や経理など後方業務が利用するシステムを統合し、同年11月にMD（マーチャンダイジング）システムも一本化する。統合費用は約10億円（本誌推定）。
経営統合直前まで阪急百貨店の取締役執行役員だった森室長は、2005年当時は同百貨店の既存システムを刷新する検討を進めていた。2014年度に2005年度当時の2倍になる売上高6000億円を目指す中期計画をサポートするためだった。「当時の中期計画に対して、既存のシステムでは対応できないことが明白だった」と振り返る。検討している最中に阪神百貨店との経営統合が決まり、軌道修正を図った。「春のシステム統合によって後方業務が効率化したことで、（2008年11月26日に開店する）西宮阪急は増員なしで対応できた」と話す。システム統合が完了後は、2008年度中にBCP（事業継続計画）を策定する予定である。
エイチ・ツー・オー リテイリングは2008年10月10日、2009年2月までに高島屋と10％程度の株式を持ち合い、3年以内の経営統合を目指すと発表したばかりだ。森室長は高島屋とのシステム統合について「まだ白紙」としながらも「阪神と阪急の場合、たまたまPOS（販売時点情報管理）レジのメーカーが同一だったためスムーズに進んだ。高島屋とはメーカーが異なるため、今回の統合のようには（スムーズに）いかないかもしれない」と気を引き締めている。
◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・椙岡 俊一代表取締役会長 兼CEO（最高経営責任者）をはじめ、経営陣はIT（情報技術）の重要性を認識しています。システム投資先行で目的が不明確になっていないかをよく問われています
◆ITベンダーに対し強く要望したいこと、IT業界への不満など
・価格の設定が不透明だと思います。SEの人件費とプログラムを掛け合わせた金額を請求されますが、納得しづらい金額の積み上げになっているものが見受けられます
◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
