電話やメール,インスタント・メッセージ(IM),テレビ会議,Web会議など,様々なコミュニケーション手段を一つのアプリケーションで統合的に利用可能にするユニファイド・コミュニケーション(UC)。コミュニケーションを取りたい相手が在席しているのか,あるいは電話中なのかといった状態(プレゼンス)に基づいて,シーンに応じた最適な手段を選んでコミュニケーションができる。企業内のコミュニケーションの円滑化による業務効率化を実現するソリューションとして,2000年前後から製品が登場している。
ただし現在に至るまで,UCは広くは普及していない。ベンダーごとに機器やアプリケーションを揃える必要があり,導入のハードルが高かったほか,ユーザーがUCのメリットを十分に実感できなかったからだ。
ここに来てこうした状況に変化が訪れている。まず2007年末から,米マイクロソフトや米IBMなどが自社のアプリケーションやグループウエアとUCの機能を融合するというアプローチで,本格的に製品の投入を始めた。企業向け分野で大きなシェアを持つアプリケーションとUCの機能を組み合わせることで,業務効率を向上できるというUCのメリットをユーザーが実感しやすくなっている。
さらに各ベンダーのUC関連アプリケーションを相互接続できるような,マルチベンダー化も進みつつある。例えばマイクロソフトは2007年10月,NEC,米シスコ,富士通,OKI,日立コミュニケーションテクノロジー,米アバイア,ネクストジェン,加ノーテルなどのPBXベンダーとの提携を発表。IBMも2008年初めにNEC,シスコ,アバイア,ノーテル,独シーメンス,スウェーデン・エリクソンなどと提携した。特定のベンダーのUC製品を垂直統合でそろえることが前提だった従来の状況から,導入のハードルが大きく下がりつつある。
このように製品として進化を遂げたことで,UCは2007年末ころから再び脚光を浴び始めている。
業務改善の一環として導入すべき
メリットが見えやすくなってきたUCだが,特定用途を目的としたERP(統合基幹業務システム)やCRM(カスタマ・リレーションシップ・マネジメント)といったソリューションと比べると,導入の際には様々な注意が必要になる。UCはあくまで社員と社員のコミュニケーションを円滑にするツールであり,その企業の業務の流れや,コミュニケーションの文化に沿った形で導入しなければ,業務にプラスの効果をもたらさないからだ。業務プロセス改善の一環としてUCを導入することが重要になる。
導入にあたっては,例えばその企業の業務フローを分析し,どこに意思決定のボトルネックがあるのか,社員間のコミュニケーションがボトルネックの原因だとすれば,どんなタイプのコミュニケーション手段を使うのが最適なのかといった事前調査が必要になる。企業や部署ごとにコミュニケーションの文化は異なるため,社内の状況を把握することも求められる。
このような注意点は,ユーザー企業だけではなく,UC製品を売るベンダー側にも言えることだ。ベンダーは単に製品やソリューションを売るだけでは不十分であり,企業のビジネス・プロセスの問題点を指摘し,改善できる提案力が求められることになる。