写真1●スコットランド沖で順調に稼働する5000kWの風車。
写真1●スコットランド沖で順調に稼働する5000kWの風車。ブレードの長さは61.5m。ドイツのリパワー社が開発。

 英国の洋上風力発電が着実に伸びている。今年末にはこれまで洋上風力をリードしてきたデンマークを抜き、世界最大の洋上風力大国になりそうだ。昨年夏に洋上で稼働し始めた世界最大の5000kW風車も順調だ。

 英国では現在、定格出力で40万kWの洋上風力発電設備が稼働しており、さらに40万kWが建設中だ。

 加えて、スコットランド沖を中心に、1件で100万kW規模の大型洋上風力開発プロジェクトが15件以上動いており、今年はさらに11の海域で洋上風力開発が認可された。2015年以降、こうした巨大プロジェクトが続々と立ち上がる見込みで、2020年までに全部で300万kW以上の洋上風力発電が稼働する計画だ。これが実現すると、原子力発電所3基分に相当する巨大な規模になる。

 英北部スコットランド沖は欧州における洋上風力発電の潜在的な開発余地の25%が集中しているとされ、近い将来、風力開発のメッカになるのは確実。既に英国は今年中にデンマークを抜いて、世界最大の洋上風力発電能力を備えることになる。

 英国は2020年までに1次エネルギーに占める自然エネルギーの割合を18%にする目標を掲げる。英国の中でもスコットランド政府は、同年までに自然エネルギーの割合を50%に高める挑戦的な目標を掲げている。自然エネルギーの中で最も期待が高いのが洋上風力発電だ。

 洋上風力の開発案件が続々と動き出している背景には、技術的、制度的に追い風が吹いているからだ。

 技術的に明るい話題は、昨年夏にスコットランドの沖合25kmに設置した1基で5000kWを出力する世界最大の風車が1年間、順調に動いていること。風力発電設備のさらなる巨大化も見え始め、経済性が一層高まる道が見えてきた。既に6000kWや7500kWの大型風車を設置する計画も進んでいるという。

洋上風力の価値が1.5倍に

写真2●海底に設置するタワー
写真2●海底に設置するタワー

 加えて、この5000kWの風車は水深45mの海底にタワーのような建造物を設置し、その上に風車の支柱を立てている。これまでの洋上風力発電設備の設置は水深20~30mの遠浅になっている海域に限られていた。水深45mでの建設が可能になり、風力開発が可能な海域が広がった。

 この深い海での巨大なタワーの建設には、海底油田を掘削し石油を生産するのに使われた技術を応用した。鉄パイプで構成されたタワーは高さ62m、重さ350t。地上の工場で組み上げて、沖まで運び海底に設置した。発電した電力は海底ケーブルで陸地に送る。

 制度的な追い風は、英国政府による洋上風力の導入促進策の強化だ。同国では電力会社に一定割合の自然エネルギーによる電力を供給する義務を課している。この義務量を達成する上で、来年から自然エネルギーの種類によって重み付けする。水力と地上風力発電に比べ、洋上風力は同じ発電量でも1.5倍に換算できる。ちなみに下水汚泥や埋め立て地から発生するメタンガスは、自然エネルギーに含まれるが、地上風力の4分の1の価値しかないことになった。

 これは2020年の自然エネルギー導入目標に向け、英国政府が洋上風力を優先的に後押しすることを明確に示している。洋上風力の環境価値が長期的に保証されたことで、民間レベルで洋上風力発電への投資がより促進されることになりそうだ。