無線LANの11nの規格はいつまで“ドラフト”なの?

(イラスト・アニメーション:岸本 ムサシ)

  今回の回答者:
大澤 智喜
アセロス・コミュニケーションズ
代表取締役社長

 IEEE802.11n(以下,11n)の無線LANの仕様は,2008年10月の時点では正式には決まっていません。今は「Draft(草稿)2.0」の段階で,2009年9月ごろに正式に決まる予定です。では,Draft 2.0とはどのような段階なのでしょう。

 無線LANの規格は,IEEE(米国電気電子技術者協会)の802委員会にある「802.11ワーキング・グループ」という組織が決めています。この 802.11ワーキング・グループの下には,規格や技術仕様の詳細を決める複数のタスク・グループがあります。11nの無線LAN規格はそのうちの一つのタスク・グループ11nが検討しています。

 タスク・グループでは無線技術の専門家などが集まり,規格の詳細を議論して仕様書を作成します。できあがった仕様書は上位組織であるワーキング・グループに提出して承認を受けなければなりません。タスク・グループからワーキング・グループに上げられたこの技術仕様書がDraftです。つまり,Draft 2.0とはタスク・グループがワーキング・グループへ承認のために提出した暫定的な仕様書の第二版のことです。

 なぜ暫定的な段階でありながら対応をうたった製品が販売されているのかというと,業界やユーザーからの要望が大きいからです。今後,正式版の前にDraftがさらにアップデートされる可能性もありますが,Draft 2.0の段階からの大きな仕様変更はないとみられています。

 IEEEとは別に,無線LAN機器メーカーの業界団体であるWi-Fiアライアンスがあります。こちらでは2007年の6月からDraft 2.0の11n機器の認証を始めました。この認証を受けた機器であれば,Draft版であっても機器間の相互接続性が保証されたことになります。今後は Draftであるかどうかよりも,Wi-Fiアライアンスで認証を受けたかどうかが製品を選ぶ決め手になるでしょう。