アクセンチュア
経営コンサルティング本部
戦略グループ コンサルタント
杉原 雅人

 前回までは,企業におけるグリーンITの活動として,データセンターやオフィスでのCO2削減の推進方法を解説してきた。グリーンITに関わる部門は,こうした自社内の事業活動におけるCO2排出量の削減への取組みが活動の第一歩になるであろう。

 一方,企業活動の延長線上にある消費者とグリーンITの関係に,今熱い視線が注がれている。今回は,国内のトレンドを広く経営的な視点で見渡そうという狙いから,アクセンチュアのグローバルな調査やアイデアを踏まえて,企業内に留まらないこうしたグリーンITの動きをご紹介したい。

家庭でのCO2削減効果が期待されるグリーンIT

 第1回でも簡単に触れたが,2006年度の日本の排出量は,基準年比6.2%と逆に上回っており,議定書の6%削減約束の達成には,京都メカニズムや森林吸収を除くと6.8%の排出削減が必要である(環境省『2006年度温室効果ガス排出量(確報値)』による)。より細かくCO2を排出している部門別にみていくと,産業部門(工場)のみが基準年比5%減と健闘しており,すでに絞りきっている感があるが,前回ご紹介した業務部門(オフィス)は逆に40%も増加していることがわかる(図1)。

図1●家庭からのCO2排出量が急激に伸びている
図1●家庭からのCO2排出量が急激に伸びている
2006年度に,家庭からのCO2排出量は基準年(1990年度)に比べて31%増加した。業務部門(オフィス)の40%に次いで高い伸び率になっている。
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 そして,業務部門に次いで,30%近くも増加しているのが家庭部門だ。製品・サービスの供給サイドにおける排出権取引や技術革新などと共に,こうした家庭部門での需要サイドも併せた,両面作戦での枠組みで検討を本格化させなければ,抜本的な解決は困難な状況となっている。

 政府は,この家庭部門でのCO2削減へのITの貢献に大きく期待している。具体的な政府のイニシアチブの一つが,『ITによる社会全体への環境貢献度の可視化』である。

 今,家庭部門においても,日本の技術的強みであるセンサー技術と無線などのICTを駆使して,個々人のCO2排出量や削減活動を可視化するためのサービスが本格的に検討されてきている。そもそも,エネルギー供給サイドであるグリーンな発電所(原子力,風力など)の導入には時間・コストがかかりライフスパンも長いのに対して,消費者サイドのグリーンな活動に対する意識変化は早く,効果に即効性がある。情報さえあれば行動を起こす可能性のある多くの消費者向けに可視化を支援するサービスは,確実に広がっていくであろう。

 では,次から,消費者の意識の実態はどうなのか,そしてどのようなサービスが考えられるのかをみていこう。