「クラウド・コンピューティングは仮想化技術が核」。そう指摘するのは,野村総合研究所の城田真琴氏(技術調査部主任研究員)である。オーバーヘッドの小さいハイパーバイザー型の仮想化マシン技術などが「“使えるレベル”まで進化したことが大きい」(城田氏)と語る。

 クラウド・コンピューティングでは,PCサーバーを集積してリソース・プールを作る。仮想化技術を使って,それをシステム単位やユーザー単位に分割して使用させる。それにより,リソースを限界まで有効活用し,可用性を高めるのである。米3Teraの「AppLogic」(日本での販売はネットワンシステムズ)を例に,仕組みを見てみよう。

 AppLogicは,RAIDをネットワークに拡張した独自のストレージ・システムと,オープンソースの仮想化ソフト「Xen」を組み合わせたものだ。Xenの仮想マシンがマウントするディスク・ボリュームのデータは,複数のPCサーバーに,RAIDのミラーリングのように分割して重複保存される(図3)。

図3●3Teraの「AppLogic」の概念図
図3●3Teraの「AppLogic」の概念図
3TeraのAppLogicは,仮想マシンのデータ(ブロック)をネットワーク内にある複数の物理サーバー上に重複して分散配置することで,データの冗長性を確保している。

 エンタープライズ・システムにおける仮想マシンの運用では,SAN(Storage Area Network)などの高価なストレージ装置を使用するのが一般的。だが,AppLogicではPCサーバーの内蔵ディスクを使う。

 AppLogicには,OSやアプリケーションがインストールされたディスク・イメージをカタログ化し,システム管理者が必要に応じてディスク・イメージを仮想マシンに展開できるWebベースの管理ソフトも含まれている。ハードウエアに障害が発生しても,別のハードウエアで稼働する仮想マシンを即座に用意し,処理を継続させることが可能になるのだ。