「だいたい,おかしいですよ,小林さん。『TeX』って書いて,なんで『テフ』なんて読めるんですか?」
「『テック』と呼ぶ人もいるよね」
「この前は,『Adobe』っていう字を,書いてある通り『アドベ』って読んだら笑われたし。『GNU』で『グニュー』なんて,決めた人は変だと思わなかったの?」
「誰が決めてるのかねえ」
「『XOOPS』とか『PostgreSQL』とか『KNOPPIX』なんて,なんて読めばいいのよ。あんたは欧米の珍読・難読漢字かっていうの!」
「あんたって誰さ? まあ,今月の鶴橋さんは元気でよかった。では,9月のベスト,いってみようか」

「まず1位は,今月も三笠書房の『たった3秒のパソコン術』だね」
「あれ,2位の日本規格協会の『個人情報保護マネジメントシステム 実施のためのガイドライン』とか,4位のオーム社の『共通フレーム 2007』って,そんなに売れてましたっけ?」
「まだ1位の話をしているところでしょ,鶴橋さん。それは,まとめのお買い上げがあったのでベストに浮上してきたんだね。でも売れ行き動向を見るには不適切なデータだから,そういう書籍は,今後は一応スルーしますんで覚えておいてね」
「ふむふむ」

「さて,この1位独走の『たった3秒のパソコン術』に姉妹版が出ました。同じ三笠書房,知的生き方文庫から出た『たった3秒のネット術』がそれ」
「初登場で5位に入りましたね」
「内容は『パソコン術』と同様,ネット利用の際の便利な機能を実用重視で紹介しています。買ってすぐ役に立つ一冊と言えるね。表紙も『パソコン術』と同じシンプルなものだけど,かわいい感じだし」
「6位が技術評論社の『Googleを支える技術』ですか」
「鶴橋さん,勝手に先に行かないでよ。『24時間365日サーバ/インフラを支える技術』が3位。先月の初登場2位に続いて大健闘だね」

「8位の徳間書店『非公認Googleの入社試験』は,先月やった送迎バスにゴルフボールを入れる話ですね」
「そういうのばかりじゃなくて,中にはこういう問題もある。『2次元平面上で無限に続く1オームの抵抗で作られた長方形の格子において,将棋の桂馬飛びの位置にある2つのノードの間の抵抗はどうなりますか?』」
「ふうん,それって要するに『無限に』っていうところがキモなわけですね?」
「えっ,そうなの? オレ,問題の意味すらわからなかったのに。少し下がって,11位にはソーテック社の『ITサービスマネジメントの仕組みと活用』。ITIL入門という副題もあって,ITIL関連の書籍で,うちではロングで売れている」

「あれっ,ところであれはどこです,小林さんお薦めの,iPhone関連の書籍は? ベストに1冊も見当たらないけど」
「うっ」
「30位まで見てもないですねえ」
「うう・・・。発売当初は売れ行きよかったんだけどね・・・」
「止まっちゃったんですか? 先月お薦めしたばかりなのに? もう? きゃははは。これって小林さん,どう責任とるんですか」
「責任てなんだよ,誰がとるかそんなもん。分野担当者の苦労も知らないで。まあ,iPhone発売のニュースは久しぶりの大きな話題で,これは絶対逃しちゃいけないと力こぶが入っていたのは確かだけどね。意外と『時分の花』は短かったということかなあ」
「じゃあ,これからどうするんです?」
「低価格PCなんて新しいテーマとしてどうかなあと思っているんだ。最近はメーカーでも低価格のマシンに重心を移そうとしているという報道もあるし,まあ,しぶしぶ,というのが本音なのかもしれないけれどね。『Eee PC』のヒットも追い風になっていると思うよ。まだ少し先だけど,暮れのボーナスを控えて,お客様の関心がこの方面に向かっていくんじゃないかと・・・。いや,あんまり言うとまた責任とれって鶴橋さんに言われちゃうから,このくらいにしておこう」

「えっと小林さん,ちょっとごめん,『イーピーシー』ってどういう意味の言葉でしたっけ?」
「え? これだよ,『Eee PC』。今年発売された低価格ノートパソコン。秀和システムからも本が出てたでしょう」
「あの,わたし,これ,ずっと『イーイーイーピーシー』って読んでました」
「それじゃ長くて言いにくいじゃん」
「だって・・・。ああ,またこれもか!」
注:鶴橋さんはもちろん,小林君も(偶然筆者と姓が同じというだけで)架空の人物です。