フォレスト・キー氏(左)とイアン・エリソンテイラー氏
フォレスト・キー氏(左)
米マイクロソフト
.NETプラットフォーム&ツール戦略
アジア地区担当
ゼネラルマネージャー

イアン・エリソンテイラー氏(右)
米マイクロソフト
プレゼンテーション プラットフォーム&ツールチーム担当
ゼネラルマネージャー

 米マイクロソフトのRIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)環境である「Silverlight」が、じわじわと支持を広げている。同社によれば全世界の普及率は約25%。日本国内では、楽天やヤフーといった大手サイトが採用する。しかし、先行する米アドビの「Flash」には、まだ遠く及ばない。Silverlightの開発リーダーは、「.NETの採用を弾みに、クラウドの入り口を抑える」と意気込む。
(聞き手は玉置亮太=日経コンピュータ)



クラウドコンピューティングにおいて、RIA環境のSilverlight 2はどんな役割を担うのか。

キー氏:Silverlightはソフトウエア+サービス戦略におけるクライアント側の基盤技術である。当社のチーフ・ソフトウエア・アーキテクトであるレイ・オジーも非常に重視している技術だ。普及を加速して、クラウドコンピューティングの「入り口」を固める。

このほど、新版「Silverlight 2」を発表した。目玉となる強化点は何か。

キー氏:まずはアプリケーション開発環境を大幅に強化したことだ。具体的には、.NET Frameworkのサブセットである共通言語ランタイム(CLR)と動的言語ランタイム(DLR)を搭載し、Visual BasicやC#、IronRubyやIronPythonといった.NET言語を使ってRIAを開発可能にした。従来のJavaScriptを使ったAjaxアプリケーションに加え、これらの言語を使った、よりリッチなRIAを開発できる。

 SilverlightはInternet ExplorerやFirefoxに加えて、Mac OS版のSafariでも利用できる。.NETで開発したRIAを、これらのブラウザで利用可能になるわけだ。今後はグーグルのChromeへの対応も検討している。

エリソンテイラー氏:GUI部品であるコントロールも大幅に充実させている。表形式のデータグリッド、リストボックスなど、標準で40種類以上を備えた。

 もう1つの大きな強化点は、DRM(デジタル著作権管理)機能を搭載したことだ。当社のDRM基盤技術「PlayReady」に基づいており、従来のWindows Media Player 10向けのコンテンツを利用できる。

なぜ今回のバージョンから.NETを搭載したのか

キー氏:開発の優先順位の問題だ。前バージョンのSilverlight 1では、何よりも普及に力点を置いた。リッチなメディア再生プレーヤーとしての機能をまず実装してリリースしたわけだ。

 当社の調べでは、Silverlightの普及率は、全世界で約25%。中国など主要な新興国では、50~60%に達しているところもある。インターネットの歴史上、最も速く普及しつつある技術ではないだろうか。

 ただ、本当にエモーショナルな表現を可能にしようと思えば、.NET技術が必要だったことも確かだ。前バージョンで普及の土台を作り、新バージョンを包括的なRIA環境にしたことで、より多くの開発者に興味を持ってもらえるはずだ。

エリソンテイラー氏:.NETを開発基盤として利用可能にしたことで、開発者にとってはRIAの処理速度を管理しやすくなる。JavaScriptはWebブラウザごとに実装が異なるため、処理性能がまちまちだ。動作の互換性に差がある点も問題である。.NETを実装したSilverlight 2ならば、ブラウザごとの処理速度や互換性の差を吸収できる。

 絶対的な処理速度自体もJavaScriptより.NETの方が有利だ。具体的なベンチマークはないが、当社での調査ではJavaScriptよりはるかに高速に実行できている。