中小企業(SMB)向け市場への浸透を狙うMicrosoftは,おなじみのWindows Small Business Server(SBS)のバージョンアップを計画している。最新バージョンである「Windows Small Business Server 2008」では,過去のバージョンで好評だった機能を強化しているほか,Premium Editonでは新たに2台目の物理サーバーにインストールできるといった新機能も提供する。SBS 2008は,2008年11月上旬に発売される予定だ。

 SBS 2008では,前バージョンのSBS 2003 R2と同じ小規模企業をターゲットにしている。Microsoftが想定する小規模企業とは,所有するパソコンが25台以下で,従業員が1~49人までの企業を指す。同社によると,この定義に当てはまる小規模企業は,米国だけで3900万社存在するという。SBS 2008は,最大で75人のユーザーまたは75台のデバイスをサポートする。

 Microsoftは,SBS 2008の開発に際してユーザー調査の結果を重視した。同社が実施した調査によると,小規模企業の最大の関心は,自分たちのデータや資産を守って会社を成長させることである。そのために,小規模企業では,災害や悪意のある攻撃からの保護,不慮のデータ消去の防止,ビジネス・データへの迅速なアクセス,カスタマの獲得,生産性の向上,イメージやオンラインでの存在感の確立,などを実現するテクノロジを期待している。さらに,そのテクノロジはシンプルで,ビジネスに見合ったものでなければならない。ビジネス・アプリケーションも非常に重要な問題だ。

2台のサーバーに分散させた利用形態も可能に

 SBS 2008には,これまでのSBS 2003と同様にStandard EditionとPremium Editionの2種類の製品ラインアップを用意する。SBS 2008 Standard Editionは,64ビット版Windows Server 2008のStandard Editionに,Windows SharePoint Services 3.0,Exchange Server 2007,Forefront Security for Exchange Server,Windows Live OneCare for Server,さらにMicrosoft Office Live Small Businessといったサーバー・ソフトを統合する。これらのOSおよびサーバー機能は,1つのサーバー上にまとめた形でのみインストールして利用可能である。

 SBS 2008 Premium Editionは,SBS 2008 Standard Editionの全機能を装備しているのに加え,2台目のサーバー上でWindows Server 2008とSQL Server 2008 Standard Editionを動かせる点がStandard Editionと違っている。ユニークなことに,2台目のサーバーにインストールする,これらのサーバー製品については32ビット版を使ってもよい。このためユーザーは,この2台目のサーバーに必要な業務アプリケーションをインストールして使うことが可能だ。たとえば,Terminal Servicesのアプリケーションの共有や,Hyper-Vによる仮想化サーバー,あるいはセカンダリ・ドメイン・コントローラとして使用することもできる。

 前バージョンのSBS 2003と比べたSBS 2008の強化点を,もう少し詳しく見てみよう。

 まず,初期導入作業は大幅に合理化された。統合されたセットアップ・ルーチンを搭載しており,シンプルなウィザードで5つの手順を踏むだけでよい(ただし,Premium Editionで2台目のサーバーを使う場合のインストール手順はセットアップ・ルーチンに統合されていない)。インストールに要する時間は,SBS 2008がプリインストールされたOEMサーバーを購入し,DVDを使ったSBS 2008のインストールが不要とすると約30分だ。以前にSBSをインストールしたことのある人なら,誰もがこの変更を歓迎するだろう。

 さらに,SBS 2008では管理用コンソールが劇的に改善されたほか,サーバーから全ての接続クライアントまでをカバーする監視および報告機能も追加された。また,Office Live Small Businessサービスと共通の自動ドメイン名登録機能,高速化されたブロック・ベースのサーバー・バックアップ,新しい拡張モデルなども備える。Microsoft ISA Serverは,シンプルなインターネット・ゲートウエイ・デバイス設定ユーティリティに置き換えられた。

賛否両論となりそうなライセンス変更

 SBS 2008は多くの点で,大幅な改善を施した製品だ。だが,この新バージョンには議論を呼びそうな要素が1つある。それは,SBSの価格体系だ。MicrosoftはSBS 2008についても,サーバーのパッケージ価格に,利用するクライアント数に応じたクライアント・アクセス・ライセンス(CAL)を購入する方式を採用している。ただし,以前の「サーバーよりもCALの価格が高い」価格体系から,サーバーの初期購入価格がCALよりも高く要件が低い価格体系に変更したのである。

 具体的には,SBS 2008 Standard Editionのサーバー製品のパッケージ価格を599ドルから1089ドルに値上げする一方で,CALの費用は100ドルから77ドルに下げた。さらに,これまでは5ライセンスずつしか購入できなかったCALを,1つずつ購入可能にする。この新しい価格体系の採用により,ユーザー数が20人を超えるケースではSBS 2008のほうがSBS 2003よりも安くなる,とMicrosoftは説明している。

 Premium Editionの価格体系も同様である。パッケージ価格は1299ドルから1899ドルに値上げしている。CALは189ドルだが,CALが必要となるのはSQL Serverにアクセスするユーザーのみである。また,SBS 2003に含まれていたのはSQL Server 2005のWorkgroup Editionだったに対し,SBS 2008ではSQL Server 2008の「完全な」Standard Editionが含まれているという点でも違いがある。