1 直流給電の節電効果はどれくらい?

 データセンターやサーバー室のエネルギー効率を高める技術として,サーバーやストレージへの給電方式に直流を採用する取り組みが活発化している。伊藤忠テクノソリューションズや日立製作所などが,新しいデータセンターにおいて設備を直流給電に対応させることを発表。NTTグループも,「グリーンNTT」と呼ばれる環境対策の取り組みの一環として,直流給電の利用促進に取り組んでいる。ただ現状は,日本では交換機やルーターなどの通信機器が直流48Vで動くが,一般の企業で直流給電を利用しているケースはほとんどない。

 直流給電方式は,従来の交流方式と比べてIT機器による電力利用のロスが小さい。直流と交流の変換回数が少ないからだ。交流方式では発電所から供給された電気を,停電などに備えてデータセンター内に蓄電するために,いったん直流に変換する。その後さらに,IT機器に給電するために交流に変換する必要がある。

 では直流の節電効果はどの程度なのか。実際には,直流給電対応のシステムと従来型交流給電のシステムを並べて比較するのは難しい。そこで直流給電時の電力ロスを実測したデータと,同等のシステムを交流給電で実現した場合の理論値を比較してみた。

推定削減効果は約18%

 埼玉県にある,NTTファシリティーズの東日本オペレーションセンターでは,直流給電設備でサーバーなどのIT機器を動かしている。同社の計測によると,ラック内のサーバーに28.5kWの電力を供給するには,データセンターに37.2kWを供給する必要があった(図1)。発電所から送られた電気のうち,データセンター内で約23%をロスしたことになる。

図1●給電時のロスが小さい直流は,同じサーバーを動かす場合に小さい電力ですむ
図1●給電時のロスが小さい直流は,同じサーバーを動かす場合に小さい電力ですむ
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 では,同じ28.5kWを交流給電方式で供給すると,どの程度のロスが生じるか。NTTファシリティーズによると,45.3kWが必要になるという。直流給電と比較すると8.1kW多い。無停電電源装置(UPS)や分電盤などのスペックから算出した値ではあるが,直流給電にすることで約18%消費電力を削減できたと推測できる。