写真1●伊藤忠テクノソリューションズ データセンター事業グループ DC事業企画室 事業開発部の唐木眞部長
写真1●伊藤忠テクノソリューションズ データセンター事業グループ DC事業企画室 事業開発部の唐木眞部長
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 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が2008年10月に開設した「目白坂データセンター(MDC)」の特徴は,立地とセキュリティに対する徹底的なこだわりである。

 その一端を垣間見ることができるのが,MDCの設置場所だ。MDCは東京都文京区の山手線内に位置する。池袋駅から最寄り駅までは約6分,大手町駅からも約15分の距離である。複数ある最寄り駅からMDCまでも数分なので,交通の便は申し分ない。

 交通の便がよいと,どうしてシステム停止リスクを低くできるのか。その理由をCTCの唐木眞氏(データセンター事業グループ DC事業企画室 事業開発部 部長,写真1)は,「データセンターが都心にあれば,システム障害発生時に利用者自身がすぐに訪れられるから」と説明する。「サーバーを修理するエンジニアやアプリケーションを開発したシステム・インテグレータのSEは都心にいることが多い。都心にあれば,短時間で駆けつけられる。その分,システム障害の復旧時間も短縮できる」(唐木氏)。

地震にも水害にも強い

 システムが停止するのはシステム障害だけが原因ではない。地震や水害によって,サーバーが故障したり,データセンターへの電力供給が途絶えたりしても停止してしまう。そこでCTCは,地震や水害に強い場所を選定している。「MDCは地盤が固いとされる武蔵野台地に建設しているので,地震による被害の恐れが少ない。川や海からの距離も遠く,海抜も10.6メートルと高いため,水害の恐れも少ない」(唐木氏)。

 このほかにも,火災が発生する可能性のあるコンビナートが近くないか,航空機が上空を通過しないか,強力な電界・磁界を発する可能性がないか,など複数の基準で場所を選定している。ここまで同社が立地にこだわるのは,災害の被害をどう防ぐかではなく,災害自体が起こりにくい場所にデータセンターを設置するという発想に基づいている。

 MDCは建物も強固な構造だ。震度7の地震にも耐えうる耐震構造で,サーバーを設置する各フロアは,地震による揺れをサーバーに伝わりにくくする床免震構造になっている。

入室は顔と人数でチェック

 システムのリスクでは,情報漏洩や不正改ざんも大きなリスクになる。そのリスクを低くするために,MDCは強固なセキュリティ設備を用意している。特徴的なのはサーバー・ルームと通路の間に設置した「前室」である。通路から前室に入る際,ICカードをかざしてゲートを通過する。そのとき,センサーで入室人数が自動的にカウントされる。その後,入室者は前室に設置してある生体認証装置で認証する。

 この生体認証の仕組みがユニークだ。まず,3次元顔認証を使っている。「指紋よりも,顔をさらす方が犯罪抑止になる」(唐木氏)と考えたためだ。また,入室人数と顔認証をパスした人数が一致して初めて,サーバー・ルームへの扉が開く仕組みになっている。無理に前室やサーバー・ルームに入ろうとしても,カメラで監視しているので,不正入室は難しいという。

ワンモア・ポイント
 MDCは省エネにも力を入れている。人を感知したときだけ明かりをつける照明を導入したり,暖気と冷気が混ざらないように空気を遮断するカーテンを設置したりして,無駄な電力を使わないようにしている。唐木氏は,「今後,データセンターの選定基準に環境への配慮が入ってくる可能性がある。データセンター事業者として今から取り組んでおくことが必要だ」と語る。

基本情報
●名称:目白坂データセンター
●場所:東京都文京区
●最寄り駅:要問い合わせ
●料金:要問い合わせ