フレッツ光ネクストを導入すれば,NTTぷららが提供する「ひかりTV」で地上デジタル放送の再送信サービスを視聴できる。BフレッツでもCS放送番組やビデオオンデマンド(VOD)を受信できるが,地上デジタル放送は帯域確保機能を持つNGNでしか配信が認められていない。再送信サービスは,地域IP網とNGN の違いを打ち出す代表的なコンテンツと言える。

 ところが,NGNのエリア拡大を本格化させると,このメリットを享受できない地域が出てくる可能性がある。

東京,大阪以外の手続きは始まっていない

 地デジの再送信サービスを提供するには,NTTぷららと共同でひかりTVを運営している放送事業者のアイキャストが,運用条件や放送設備について各放送事業者の同意を得る必要がある(図1)。10月初め時点でアイキャストが得ている同意は,東京都と大阪府の2地域内だけ。フレッツ光ネクストの提供エリアがそれ以外に広がれば,道府県単位でその都度,その地域の放送局と同意を結ばなければならない。関東や近畿は広域圏として同一局が放送しているチャンネルもあるが,それでも「県単位で同意することが条件」(NTTぷららの伊藤康之・映像ビジネス本部映像サービス企画部長)だという。

図1●ひかりTVの地上デジタル再送信はNGNのエリア展開から遅れる見通し<br>アイキャストは,NGNの提供エリアが広がるごとに各県単位で地上波放送局から再送信の同意を得なくてはならない。NGNのエリア拡大ペースに再送信サービスエリアは追いつかない。
図1●ひかりTVの地上デジタル再送信はNGNのエリア展開から遅れる見通し
アイキャストは,NGNの提供エリアが広がるごとに各県単位で地上波放送局から再送信の同意を得なくてはならない。NGNのエリア拡大ペースに再送信サービスエリアは追いつかない。
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 東京都と大阪府の場合は,手続きを開始してからすべての放送局の同意を得るまでに6カ月を要し,NGNの商用化開始時点で再送信は間に合わなかった。

 これは光ネクストのエリアが広がる中,今後もつきまとう問題となる。8月中旬時点ではアイキャストはまだ新たな再送信同意を結ぶ手続きを始めていなかった。年内には東日本地域のすべての県庁所在地でフレッツ 光ネクストの販売が始まるが,どのエリアでもフレッツ光ネクストの販売開始には間に合わない公算が大である。

 NTTぷららはひかりTVをCATV放送と同等のサービス内容にすることを目指し,BSデジタル放送についても再送信を実現したい意向だ。BS放送事業者側も,NHKやWOWOWなどは加入者のすそ野を広げるために協力する姿勢を示す。ただ,この場合の再送信同意手続きについては,枠組みすら決まっていない。民放系のBS局も含めて同意するとなれば,年内の提供は難しいだろう。