NTT東西はフレッツ光ネクスト経由で提供するひかり電話について,「NGNになったことで地域IP網版よりも信頼性が向上した」という説明はしてこなかった。しかし,たびたび故障や通信事故を起こしていた地域IP網版のひかり電話と信頼性が同等ならば,NGN導入のメリットはないことになる。

 Bフレッツ版と光ネクスト版のひかり電話の契約者向けサービス案内をよく見比べると,信頼性について異なる記述が見つかる。Bフレッツ版の案内にある「災害時に優先的に通話を確保する仕組みはない」としている部分が,光ネクスト版では省略されていたのだ(写真1)。

写真1●回線種別ごとに記載内容が違うひかり電話の案内
写真1●回線種別ごとに記載内容が違うひかり電話の案内
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 加入電話では,災害などで通話が集中し,輻輳(ふくそう)が生じた場合に,警察や消防などが使う特別な電話回線の通話を優先してつなぐ「災害時優先電話」という仕組みが備わっている。この仕組みがない,という記述を省略したことからは,光ネクスト版のひかり電話には輻輳制御の機能が備わっているように読み取れる。輻輳制御は,NGNの特徴である「加入電話網並みの信頼性」の具体例に挙げられる機能であり,ひかり電話の信頼性向上に大きく寄与する。

電話網と同等の制御が可能か検証中

 NTT東日本によれば,「現時点ではユーザー回線には適用していないが,NGN網の機能で優先電話の仕組みの検証は進めている」という。NGNの場合,加入電話網と異なり,同じインフラで音声だけでなく映像などのデータ通信用にも帯域を確保する機能を提供している。こうした点を考慮した上で,加入電話と同じように優先的に通話を確保できるかをNGN網の中で検証している段階だという。

 輻輳制御の導入はそう遠くない時期に実現しそうだ。以前からひかり電話ユーザーから要望の高かった「0570番号」への発信が,9月8日から一部可能になったからだ。0570で始まる電話番号は,チケット予約のコールセンターなど通話が集中しやすい用途に使われている。輻輳制御技術がなかった地域IP網のひかり電話では,サービス安定化のため0570番号への発信ができなかった。これが利用可能になったということは,IP電話の輻輳制御が一段階実用性を増したことを意味する。

 NGN版のひかり電話はサービス面でもBフレッツ版よりも進化している。これまでキャッチホン契約をしているひかり電話回線では,テレビ電話や,同時に 2回線を利用できる「ダブルチャンネル」が併用できなかった。キャッチホン契約は,無料通話付きのパッケージ契約「ひかり電話A(エース)」の標準機能に含まれている。このため,多くのひかり電話ユーザーは,テレビ電話を使えなかった。これに対してNGN版のひかり電話では,1回線で使える帯域を拡大し,付加サービスの重畳契約の制約を撤廃した。