NGNの本格エリア展開に合わせて大幅に強化されたのがNGN専用のフレッツVPNシリーズである。NTT東西は8月,多数の拠点間で閉域通信グループを構築できる「フレッツ・VPNワイド」を投入した。

 このサービスはNTT東西自ら「フレッツVPNシリーズの決定版」と太鼓判を押す自信作。地域IP網では最大80拠点だった収容可能な拠点数は最大 1000拠点にまで拡大した。オプションで,センターとなる拠点に広域イーサネットや局内接続など高速回線を使える「センター回線接続」,NTT東西それぞれに構築したVPN間の通信が可能になる「東西接続サービス」も用意した。これまでは“エントリー・クラス”のVPNとされてきたフレッツVPNシリーズが,広域を対象とした他事業者のIP-VPNサービスとも肩を並べられる内容となった。

既存VPNからNGN版VPNへ移行を促す

 今回のサービス拡充では,地域IP網のフレッツVPNシリーズからNGNへの移行方法も明らかになった。具体的には,地域IP網につながるBフレッツなどの既存回線から,NGN側に構築したVPNに接続できるようにした(図1)。これにより,フレッツ光ネクストが主要都市部でしか使えなくても,既存回線を合わせることで全国規模の閉域網を作れるようになった。

図1●VPNサービスはNGNへの移行が前提<br>NGNを活用するVPNサービスに,既存のBフレッツ回線からも接続できる。ただし,既存地域IP網上のVPNにはNGN側からつながらないため,既存VPNの利用者はいずれはNGNへの移行が求められる。
図1●VPNサービスはNGNへの移行が前提
NGNを活用するVPNサービスに,既存のBフレッツ回線からも接続できる。ただし,既存地域IP網上のVPNにはNGN側からつながらないため,既存VPNの利用者はいずれはNGNへの移行が求められる。
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 逆に,地域IP網上に構築済みの既存のフレッツVPNシリーズに,フレッツ光ネクスト回線から参加する手段は提供されない。「今後も提供する予定はない」(NTT東日本)という。基本的にフレッツ光ネクストの提供エリアでは,Bフレッツなど既存の光回線への新規加入はできない。つまり,地域IP網上に構築したVPNには,フレッツ光ネクストの提供エリアにある拠点を新たに追加できないことになる。

 これは地域IP網版のフレッツVPNユーザーにNGNへ自主的に移行してもらうための施策と言える。フレッツ光ネクストの提供エリアが広がれば広がるほど,地域IP網版のフレッツVPNは使いにくくなる。この場合,地域IP網側のVPN契約を止めて,NGN側に新たにVPNを設定し直せば,従来通り拠点の追加や移動は自由になる。少々強引な手法だが,移行により収容拠点数の拡大や東西間接続などのメリットも得られる。