大日本印刷株式会社のCIOに相当する小槙達男 取締役 情報システム本部担当

 大日本印刷のCIO(最高情報責任者)に相当する小槙達男取締役情報システム本部担当の言葉を借りると、印刷会社は「顧客企業の大切な情報を預からないと製品を作られない企業体」である。顧客企業から発表前の新製品広告やスクープが載った記事のデータを預かる。情報セキュリティーの強化は企業として取り組むべき優先事項だ。

 同社がその点を改めて確認したのは、2007年に発覚した大規模な個人情報の流出事件。業務提携をしていた企業の元社員による犯行だったが、小槙取締役は「反省を踏まえて、ネットワークやサーバー、パソコンといったIT(情報技術)の面でも、入退室管理の徹底やビデオによる撮影といった物理的な面でも対策に力を入れてきた」と話す。事件後に立ち上げた情報セキュリティー本部のトップも務める。

 小槙取締役が情報セキュリティー以外で力を入れている分野は、基幹業務システムと情報流通基盤だ。前者ではITガバナンスに全社最適の視点を取り込む。印刷から電子部品に至るまで事業の数が増えるにつれ、情報システムは事業ごとに個別最適で構築されがちになった。「ITだけではなく、営業や開発の業務の進め方を白紙から見直していく」(小槙取締役)。事業部をまたいだ業務の標準化や、社員間の情報共有を進めるためのメールシステム刷新にも今後取り組む。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・アルファベット3文字の専門用語は使わないように心がけています。ほかの役員は事業の責任者なのでIT(情報技術)について技術的な話ばかりするのは間違い

◆ITベンダーに対し強く要望したいこと、IT業界への不満など
・設計・開発は内製が多いので、1つの企業に丸投げはしません。うちが置かれている状況をよく理解して具体的に提案してくれるベンダーをそのつど選んでいけたらと思います

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・朝日新聞
・東洋経済
・選択
いずれも当社で印刷しております(笑)

◆最近読んだお薦めの本
・『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一、講談社)
・『オペラの数ほど愛がある―オペラ史でたどる愛のかたち』(永竹由幸、集英社)

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の勉強会には情報システム本部から誰かが行くようにしています

◆ストレス解消法
・日曜にゴルフを楽しんでいます。
・2~3年前の健康診断でダイエットの必要性を指摘されて、雨や真夏を除いて新宿駅から市ヶ谷の本社までは徒歩で通っています