受託ソフトウエア開発の会計基準が「工事進行基準」に移行するまで1年を切る中、ソリューションプロバイダ各社の方針が明らかになってきた。

 5月中旬以降に開かれた決算説明会では、進行基準の適用に関するコメントが相次ぎ、大手ほど進行基準に積極的に対応しようとしている姿勢が明らかになった。

 「進行基準の適用は来年度からマスト(必須)だと考えている」。NECの小野隆男執行役員常務は、5月15日の2008年3月期決算説明会で、こう断言した。

 前向きな発言はNECだけではない(図1)。JBISホールディングスの内池正名社長は、「すべての案件を進行基準に移行することになるとは考えていないが、しかるべき体制を整備する必要はある」と説明。プロジェクトマネジメントを強化するなどして対応を進めていると強調した。

図1●工事進行基準の適用に関するソリューションプロバイダの姿勢
図1●工事進行基準の適用に関するソリューションプロバイダの姿勢
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 大手が積極姿勢を示す一方で、中堅・中小は「まだ様子見」あるいは消極的な姿勢を示す企業が少なくない。小規模で短期間のプロジェクトの比率が高い中堅・中小のSIerにとって、進行基準の適用対象となる案件はそれほど多くないからだ。

 あるメーカー系SIerの役員は、進行基準の適用について「進捗途上で完成していないのに損益を計上することには抵抗があるし、意味がないと感じる」と言う。主に大規模案件だけに適用し、それ以外に広げていくことには否定的な見方を示した。

 「情報サービス産業協会(JISA)が示す方針に従う」(独立系中堅SIer)との声もある。JISAは今夏にも進行基準の解説書を発行し、秋までには対応マニュアルも作成する。この動きを待とうというわけだ。

 ソリューションプロバイダが進行基準を適用する際には、社内の体制を整備していくだけではなく、顧客の理解を得ることも重要になる。ところが肝心の顧客が現段階では進行基準に対して「無関心」であることも明らかになっている。

図2●ユーザー企業における工事進行基準の認知度
図2●ユーザー企業における工事進行基準の認知度

 日経マーケットアクセスが4月に発表した調査結果によると、ユーザー企業における進行基準の認知度は低い(図2)。進行基準という言葉を「聞いたことがない」との回答は6割に達した。

 ソリューションプロバイダは進行基準の適用を進めるに当たり、顧客への啓蒙活動にも力を入れていく必要があることが浮き彫りになった。