SIerやメーカーなどのITベンダーに勤務する社員の52.6%が、「工事進行基準」を知らない─。本誌が8月18日から20日の間、ユーザー企業やITベンダーに勤務する約2000人を対象にインターネット調査を実施したところ、衝撃的な事実が分かった()。

図●工事進行基準の認知度
図●工事進行基準の認知度
[画像のクリックで拡大表示]

 2009年4月以降に始まる事業年度から、受託ソフトウエア開発でITベンダーは原則として、工事進行基準を適用しなければならない。残された時間は既に1年を切っている。にもかかわらず、ユーザー企業だけでなく、ITベンダーに勤務する人にも認知されていないことが浮き彫りとなった。

 「工事進行基準を知らない」と回答した人のうち、職種別で見て認知度が低いのは「保守/サポート」「SE/プログラマ」「営業/マーケティング」の順である。工事進行基準を知らないと回答した「プロジェクトマネジャー」も、42.3%に達した。

 こうした現状について、工事進行基準に詳しいベリングポイントの山田和延シニアマネージャーは、「プロジェクトマネジャーは、自社で工事進行基準を採用した場合に、管理方法がどのように変わる可能性があるのかを知っておく必要がある。4割もの人が知らないというのは問題だ」と指摘する。工事進行基準は、プロジェクトの進捗に応じて売り上げや発生したコストを計上しなければならないからだ。

 調査では「工事進行基準を知っている」と回答した人に対し、業務への影響についても自由に記入してもらった。ITベンダーの中には、あいまいさを排除することへ期待する声がある一方で、不安を漏らす声もあった。

 ある営業担当者は、「契約やシステム開発が厳格になることで、契約や検収の手続きが煩雑化し、案件が長期化するのではないか」と回答した。管理職からも「社内のSEとの折衝や調整が難しくなるだろう。仕事を取るのが慎重になり、ビジネス拡大に影響しそうだ」との意見もあった。

 工事進行基準が適用されると、要件定義などはより厳密さが要求されるため、ユーザー企業の協力体制が重要になるだろう。しかしユーザー企業に勤める回答者の工事進行基準の認知度はさらに低い。808人中で「知っている」と回答したのは23.1%。工事進行基準を適用するITベンダーは、ユーザー企業への啓発活動をもっと強化する必要がありそうだ。