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フリー・エンジニア 高橋隆雄 |
先ごろ,米ディジウムから「Skype For Asterisk」の提供に関する発表があった(関連記事)。SkypeとAsteriskとの相互接続が可能になる模様である。今回はこのSkype For Asteriskについて解説する。
SkypeとAsteriskの接続という点では,本連載の29回でも紹介したように,これまでもつなぐことは可能だった。ただし,いわゆるB2BUA(Back to Back User Agent)方式であって,Asteriskが直接Skypeのプロトコルを使用するわけではない。
では今回リリースされたSkype For Asteriskは何が違うのだろうか?図1はAsteriskの内部構造である。ここで図左側の「チャネル」の部分に注目していただきたい。Asteriskは各プロトコル,例えばSIP(session initiation protocol)ならSIPの,H.323ならH.323のプロトコルに対して「チャネル・ドライバ」と呼ばれるモジュールを持っている。通常これらは独立したモジュールで,それぞれが単一のプロトコルを処理するようになっている。

今回,ディジウムが発表したSkype For Asteriskは,報道発表によれば,このチャネル・ドライバとして実装されることになっている。すなわち,SIPやH.323などのプロトコルと同様にSkypeプロトコルを直接,Asteriskが扱えるようになる意味だと解釈できる。
Skypeはサポートしないはずなのでは?
AsteriskはSkypeを直接サポートはしない,というのは以前から筆者も言ってきたことだが,これは基本的にいまだに正しい。AsteriskがSkypeをサポートしない理由は簡単で,Asteriskはオープンソースだが,Skypeはオープンソースではないということ。そもそも独自プロトコルを採用し,独自のサービスとして機能しているSkypeがオープンソースになることは,おそらくあり得ない。なのになぜ今回,AsteriskがSkypeをサポートすることになったのだろうか?その理由はニュース・リリースを細かく読んでいくと理解できる。
AsteriskがSkypeを“サポートする”条件は,実は以前から提示されていた。それは「スカイプからの歩み寄り」があればというものだ。これはディジウムにしてみれば当然で,ビジネス・パートナーとして組むことに魅力があるか否かということである。eBay傘下となったスカイプにとって,ビジネスとして利益を出すことは,従来のサービス形態では恐らく困難であったと思われる。そこでAsteriskとの相互接続も視野に入れ始めたのではないだろうか。ディジウム側にしてみれば“NAT抜けが容易で既存ユーザーの多いソフトフォン”として,Skypeは魅力的だったのだろう。