無線LANを企業で本格展開する際に欠かせないのが「無線LANスイッチ」と呼ばれる機器である。複数の無線LANアクセス・ポイントを管理・制御して,無線ネットワークを効率的に使えるようにする機器だ。専用の無線LANアクセス・ポイントとセットで使う。

電波干渉を防ぎ負荷を調整する

 企業のオフィスなどに無線LANを導入するときは,電波がフロア全体にまんべんなく届くように,無線LANアクセス・ポイントを複数台設置して運用することになる。その際に問題になるのが,アクセス・ポイント同士の電波干渉や,クライアントが移動した際に,通信するアクセス・ポイントを切り替えるなどの処理である。無線LANスイッチは,複数の無線LANアクセス・ポイントを一元的に管理してこうした問題を解決し,フロアのどこにいても無線LANを利用できるようにする。

 無線LANスイッチは,それぞれのアクセス・ポイントの通信状態や,クライアントの接続台数などを監視する。そして,電波干渉が発生しないように電波の届く範囲を自動調整したり,クライアントがアクセス・ポイントを移る際のハンドオーバーの制御をする。また,特定のアクセス・ポイントだけにアクセスが集中しないようにする負荷分散機能も持つ(図6)。

図6●複数の無線LANアクセス・ポイントを管理/制御する「無線LANスイッチ」<br>無線LANスイッチは,LANに配置した複数の無線LANアクセス・ポイントを制御し,アクセス・ポイントの負荷を分散したり,クライアントの認証を一括して管理したりする。
図6●複数の無線LANアクセス・ポイントを管理/制御する「無線LANスイッチ」
無線LANスイッチは,LANに配置した複数の無線LANアクセス・ポイントを制御し,アクセス・ポイントの負荷を分散したり,クライアントの認証を一括して管理したりする。
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 特に最近では,無線LAN機能を備えたIP電話端末を使ってVoIPを実現する企業が多くなってきた。その際,無線LANクライアントが移動しても途切れずに通話を続けらるようにしなければならない。無線LANスイッチは,こうしたネットワークを構築する際に不可欠な機器というわけだ。

 さらに,認証サーバーと連携してユーザー認証を実施したり,クライアントのトラフィックをVLANごとに振り分ける機能を持つ製品もある。各無線LANアクセス・ポイントに全社員の認証情報を持たせるのではなく,無線LANスイッチが認証処理を一括して引き受け,VLANの制御も担当する。

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