レイヤー3スイッチは,LANスイッチとルーターの機能を併せ持った機器である。LANスイッチと同様に,イーサネット・ポートをたくさん備えているが,社内ネットワークにおいて果たす役割は違っている。

VLANを駆使してネットワークを作る

 社内ネットワークの規模が大きくなってくると,パフォーマンスの低下防止や管理のために社内ネットワーク全体を複数のネットワークに分割する必要が出てくる。レイヤー3スイッチは,こうした用途で活躍する。

 レイヤー3スイッチを利用する際には,「バーチャルLAN」(VLAN(ブイラン))と呼ばれる機能の利用が前提となる。VLANは,イーサネット・フレームの届く範囲を制限する機能である。この機能を使って分けられた「仮想的なLAN」も「VLAN」と呼ぶ。このVLANがIPネットワーク全体から見て一つのネットワーク(サブネット)になる。

 異なるVLAN同士の通信を実現するときは,レイヤー3スイッチが備えるルーター機能を使う。つまりレイヤー3スイッチは,同じVLANに所属するマシン同士が通信するときはLANスイッチとして動作し,異なるVLANに所属するマシン同士が通信するときはルーターとして動作する(図3)。

図3●LANの主役「レイヤー3スイッチ」<br>一つのLANをバーチャルLAN(VLAN)を使って分割し,VLANを一つのネットワークとして扱う。同一VLAN内のやりとりではLANスイッチとして動作し,異なるVLAN同士のやりとりではルーターとして動作する。
図3●LANの主役「レイヤー3スイッチ」
一つのLANをバーチャルLAN(VLAN)を使って分割し,VLANを一つのネットワークとして扱う。同一VLAN内のやりとりではLANスイッチとして動作し,異なるVLAN同士のやりとりではルーターとして動作する。
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 企業では,部署ごとやフロアごとにレイヤー3スイッチによってVLANを分けるケースが一般的である。こうして作ったVLANは最終的にビル内にある一つのレイヤー3スイッチに集約され,ここでVLAN間通信(ルーティング)が実行される。レイヤー3スイッチが社内ネットワークの集約部分で使われるのはこのためである。

 多数のサーバーを集めて運用するデータ・センターのネットワークでもレイヤー3スイッチが欠かせない。ユーザーが所有するサーバーごとにVLANを構成して,ユーザーごとにネットワークを分ける。そして,レイヤー3スイッチが搭載するルーティング・プロトコルやVRRPなどの冗長化機能を使って,機器や経路に障害が発生したときでもサーバーにアクセスし続けられるネットワークを作っている。