インターネットをはじめとするIPネットワークに不可欠な機器がルーターである。複雑につながったネットワーク上にある目的のマシンまでデータを届ける役割を果たす。

IPネットワークを作る機器

 IPネットワークでは,LANを一つのネットワーク(サブネット)として扱う。ルーターは,そのネットワーク同士をつなぐ機器である(図2)。LANスイッチがLANを作る機器ならば,ルーターはそのLAN同士をつなぐ機器というわけだ。

図2●IPネットワークを作る「ルーター」<br>ルーターは,IPパケットのあて先IPアドレス情報を見て,IPパケットを適切なあて先へ転送する。
図2●IPネットワークを作る「ルーター」
ルーターは,IPパケットのあて先IPアドレス情報を見て,IPパケットを適切なあて先へ転送する。
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 ルーターは,「どのネットワークがどのルーターの先にあるのか」という情報を記載した「ルーティング・テーブル」と呼ばれる経路表を使ってパケットの中継経路を決める。経路表は,こうした経路情報を個々のルーターに手動で設定したり,ルーティング・プロトコルを使ってルーター同士で自動的にやりとりして作成する。

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 パケットを受信したルーターは,IPパケットのヘッダー部分に記載されたあて先IPアドレスを見る。そして,経路表からあて先ネットワークを判断し,そのネットワークの方向(ネクスト・ホップ)へとパケットを中継する。こうした作業をそれぞれのルーターが次々に繰り返し,最終的に目的のネットワークまでパケットを運ぶ。

 最も単純なルーターは,家庭向けのブロードバンド・ルーターである。家庭のブロードバンド・ルーターは,受け取ったパケットをプロバイダの決められたルーターへただ中継するだけである。そのための経路計算よりもアドレス変換が処理のメインになる。

 一方,企業ではWAN接続でルーターが利用される。こうした企業向けWANルーターは,ネットワークを安全かつ滞りなく使うための企業ネットワークならではの機能が備わっている。

 企業向けWANルーターが持つ代表的な機能としては,(1)拠点間通信の盗聴を防ぐインターネットVPN機能,(2)経路や機器を2重化するバックアップ機能,(3)インターネットなどからの攻撃や不正アクセスを防ぐセキュリティ機能,(4)IP電話の音声を途切れないようにするQoS機能──などである。