周翼

 最終回である今回は,日中開発チーム間の橋渡し役である「コミュニケーター」を務める筆者の1日をご紹介します。日本と中国という遠く離れた地での共同開発を成功に導くには,仕様変更の確認や不具合の早期発見などで密なコミュニケーションが不可欠です。

朝会で中国側タスクの状況を報告

 今日は水曜日です。週の中間なので,月曜日に中国側に伝えたタスクの進捗を確認し,金曜日までの開発を調整します。

[8:50]
 家を出ます。会社まで自転車で5分です。

[9:00 出社]
 出社したらすぐにデスクトップPCでEclipseを起動して最新のソースコードを取得。同時に,ノートPCでメーラーを起動し,社内の連絡事項やユーザーからの問い合わせをチェックします。ユーザーから1件の不具合報告がありました。早速,JUDEを起動して試してみたら,簡単に再現できるようです。「不具合の解決を最優先にしないといけない。日本側で修正するか,中国側に任せるか,朝会の時に確認しよう」と決めました。

 引き続いて,朝会で中国側のタスク状況を報告するために,中国側の進捗を見ます。Wikiを開いて,今週のイテレーション・ページを表示させ,各タスクのPast点数(使った日数)とNeed点数(残りの日数)を確認します(図1)。張さんに依頼した技術調査のNeed点数が予想より多くなっていますが,ほかのメンバーの実装が順調に進んでいるようです。「実装は途中だが,開発の状況を共有するために,開発中の機能のデモを今日中に行おう。そして,張さんに一声かけないと」と私は決めました。

図1●進捗管理用のWiki
図1●進捗管理用のWiki
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[9:30]  朝会の司会者が,「タスク看板を更新してください」と言って,全員に朝会の準備を促します。私は,自分の“ToDo”欄に「デモ会」の付箋を貼ってから,中国側の看板をチェックします。中国側に完了したタスクと新たに着手したタスクが無いので,各タスクの状態は昨日と同じ。更新する必要はありません。

[9:35 朝会]  朝会は立ったまま行います(図2)。順番に自分のタスクを報告し,全員で問題点を共有していきます。15分以内にミーティングを終わらせることを,参加者全員が心掛けています。

図2●朝会
図2●朝会

 私が報告する番になりました。「昨日,私のタスクとしてA機能の開発をして,上海チームからの質問に答えました。今日は,このA機能の開発を続けたいと思います。上海チームが担当するB機能は順調に進んでいるようです。まだ開発の途中ですが,デモ会を開きたいと思います。皆さん,時間はありますか?」。ほとんどのメンバーは10時30分なら時間があるということなので,その時刻にデモを行うことにします。

 引き続いて,「昨日,上海チームの王さんと李さんはペアでB機能の実装をしました。張さんは技術調査をしました。気になるのは,張さんの進捗です。予想以上に時間がかかる可能性があります。状況を確認する必要があると思います」と,私は中国チームの状況を報告しました。すると開発リーダーは「わかりました。こちらも提供できる情報があれば,張さんに伝えたほうがいいかもしれませんね。本当に難しかったら,この調査をペンディング(延期)して,代わりにほかのタスクをやってもらうことも考えられます」とアドバイスをくれました。

 「はい,わかりました。張さんが出勤したら,詳しい状況を確認します。次に,ユーザーからの不具合報告ですが,どうしましょうか? 上海チームに修正してもらいますか? 現在上海チームの全員はタスクを持っています。この修正をしてもらうとしたら,タスクの調整が必要です」と,私は今朝届いた不具合について報告しました。すると開発リーダーは,「まず,張さんの状況を確認してから,決めましょう。技術調査の代わりに,張さんに修正してもらうことも考えられます」とのアドバイスをくれました。