情報通信法の制度設計の在り方を議論している情報通信審議会の「通信・放送の総合的な法体系に関する検討委員会」は2008年9月26日に第8回会合を開き,今後の検討課題を整理したアジェンダ案に対する関係者からの意見聴取(ヒアリング)を行った。八つの項目に分けた検討課題のうち今回は,「伝送設備規律」を対象にした。意見を述べたのはKDDIとソフトバンクモバイル,JSAT,日立製作所,日本民間放送連盟である。民放連は,伝送設備規律よりも法体系の基本的な考え方に問題があるとして,これまでの反対意見を主張した。

 九つに分かれる現在の通信・放送関連法をレイヤー(階層)型に組み替えて一本化する情報通信法の検討が始まった段階から民放連は,地上波放送のレイヤー型法体系への転換に反対し続けてきた。今回の意見聴取でも,2006年6月の政府与党合意における「基幹放送の概念の維持を前提にする」という趣旨を踏まえて,「基幹放送である地上波放送においては,ハード・ソフト一致の原則を制度上で担保することが大前提だ」と述べた。政府与党合意では,地上波放送のハード・ソフト一致の原則が確認されているという。さらに,「放送という名称を特別メディアサービスと言い換えて,視聴者に無用の混乱を与えてはならない。放送法の理念や放送という法律上の名称は,積極的に継承すべき」とした。

 伝送設備の規律についても否定的な意見を述べた。検討委員会のアジェンダ案では,(1)通信・放送の両方のサービスを行うための免許申請制度や,免許を受けたあとに柔軟に用途を変更できる制度を,国際法規との整合性を確保することを前提に検討すべきか,(2)電波利用の手続きにおいて,携帯電話などで認められている「特定基地局」の制度を検討するのは適当か──といった点を示した。

 こうした点について民放連は,「現行制度に制約があるために,地上波放送事業者が通信・放送連携サービスを提供できないわけではない」とした。さらに,「特定基地局のニーズは,現時点ではない」と言い切った。また,「放送用の周波数は,ほかの用途で利用すべきではない」と述べ,一部の関係者から出ている「ホワイトスペース論」に反対した。一方で,番組素材の伝送などに使っている放送事業用周波数の一部については,「放送事業者による自律的な運用の下で,ほかの用途で利用することを検討する余地はある」と柔軟な姿勢をみせた。

 検討委員会は10月21日の第9回会合で「伝送サービス規律」と「コンテンツ規律」に関する意見聴取を,11月25日の第10回会合で「コンテンツ規律」と「法体系全体」に関する意見聴取を行う。民放連と検討委員会の“バトル”は,コンテンツ規制が意見募集の直接の対象になるこれからが本番になる。