外資系メーカーが大きなシェアを持つID管理ソフト市場に、受託開発を生業としてきたSIerが打って出た。日本のユーザー企業の組織体制に合わせた設定機能を盛り込み、先行製品との差異化を図った。製品出荷早々、早くも数万人規模の開発案件を受注している。
「束人」(そくと)は、インテックが開発したJavaベースのID管理ソフトである。製品の中核は、複数の業務システムが個別に持っているID情報を管理するミドルウエア。これにワークフロー機能や、ユーザー情報の登録・削除など、ID管理に必要な機能を追加してある。束人の出荷は2008年12月だが、ミドルウエアを単体製品「結人」(ゆいと)として9月から先行出荷した。
開発のきっかけは若手・中堅社員5人による“作戦会議”だ。参加メンバーは、2000年からノルウェーのID管理ソフト「MaXware」を販売していた営業担当者や、ユーザー企業への導入作業を手掛けていたSE。会議の本来の目的は営業とSEの情報交換だが、メンバーは「これまでの経験を生かした独自のソフトを作れば、先行他社に勝てる。受託開発だけでなくメーカーとして勝負したい」という思いを共有するようになっていた。同年11月、自社製ソフトの開発に着手した。
国内のID管理ソフト市場は、既に日本ヒューレット・パッカードや日本CA、サン・マイクロシステムズといった外資系メーカーが先行している。後発のインテックが束人の開発に当たって最も力を入れているのは、日本企業特有の組織体制や人事体系に合わせた独自の設定機能を盛り込むことだった。「一人の社員が複数の役職を兼務する」「一つの役職が持つ権限を、複数の社員が担当する」といった設定を可能にした(図)。