長谷 和幸(ながたに かずゆき)
アイテック情報技術教育研究所 主席研究員

 今回は,TCP通信の基礎について取り上げる。Webアクセス(HTTP)や電子メール(SMTP,POP3)など,われわれが普段使っているネットワークアプリケーションの多くは下位プロトコルとしてTCPを使っている。当然,テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験でもTCP通信についての基本知識は必ず習得しておく必要がある。

今日の問題

問1 TCPとUDPに関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。

 L社では,図Aに示す構成のシステムを用いて,各拠点内及び拠点間で,IP電話による通話や映像配信を行っている。このシステム構成において,IP電話機同士での通話中に,音声パケットの滞留による音声の遅延や,音声パケットの損失による音声の途切れが発生した。この音声パケット通信障害について原因を追究する準備のために,TCPとUDPについて調査した。

図A●システム構成
図A●システム構成
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 TCPとUDPは,OSI参照モデルの層のプロトコルである。その下位層である層のプロトコルにIPがある。TCPとUDPでは,で識別される間の通信を行う。IPでは,IPアドレスで識別されるネットワーク機器間の通信を行う。

 TCPとUDPを比較すると,TCPは通信の信頼性を確保するため,データパケットを確実に送信するための機能を備えている。その一つとして,TCPはコネクション確立を必要とし,1対1の通信だけを行う。例えば,クライアント/サーバ間でデータパケットの送信を交互に1パケットずつ行う場合,コネクション確立から切断までのパケットシーケンスは図Bのようになる。それに対して,UDPはの管理以外は行わないので,信頼性はTCPに比べて低下するが,通信処理の負荷は小さい。また,UDPはコネクションレスであり,1対多の通信も可能である。

 このような特徴から,TCPは,HTTP,FTPなどデータがすべて確実に伝わることが要求されるプロトコルに利用されている。一方,UDPは音声通話,映像配信などで多く利用されている。音声通話の一つであるIP電話では,データがすべて確実に伝わることよりも,リアルタイム性が優先されるので, UDPが利用されている。また,UDPはネットワーク内で不特定多数の相手に向かって同じデータを送信するや,ある特定の複数の相手を対象に同じデータを送信するを使用した放送型の配信に利用されている。

図B●TCPパケットシーケンス
図B●TCPパケットシーケンス

設問1 本文中の,に入れる適切な字句を,カタカナで答えよ。

設問2 本文中のに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。

解答群
ア IPアドレス     イ SMTP
ウ SNMP        エ SNTP
オ アプリケーション  カ エニーキャスト
キ シーケンス番号   ク セッション
ケ ブロードキャスト  コ ポート番号
サ マルチキャスト   シ ユニキャスト
ス ルーティング

設問3 図BのTCPパケットシーケンスについて,次の(1),(2)のパケット数をそれぞれ答えよ。

(1) 図Bにおいて,AからBまでの間でやり取りされるパケット総数
(2) 図Bと同じデータの通信をUDPで実装した場合にやり取りされるパケット総数。ただし,パケットの破損や損失への対応は行わないものとする。

(平成19年度秋期ソフトウェア開発技術者午後I問1を改変)

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