2008年9月17日,国内のIT系ネット・メディアの編集長6人が一堂に会し,座談会が開かれた。IT業界を取り巻く環境と,ネット・メディア自身の変化について,ディスカッションしようと日経BP社が呼びかけ,各メディアがそれに応じて実現した。

 参加した編集長は,メディア名順で以下の通り。@IT編集長の三木泉氏,builder編集長の冨田秀継氏,CNET Japan編集長の別井貴志氏,ITmediaエンタープライズ編集長の浅井英二氏,エンタープライズ・メディア統括 兼 ZDNet Japan編集長の大野晋一氏。そこにITpro編集長の三輪芳久が加わった。なお,参加した6編集長のうち,@IT編集長の三木氏は米ラスベガスからSkype音声での参加となった。司会は,ITpro発行人の林哲史が務めた。(前回の記事はこちら

@IT builder CNET Japan
ITmediaエンタープライズ ZDNet Japan ITpro

先ほどから気になっていたのですが,大野さんがiPhoneを机の上に出されています。iPhoneとか携帯とか,こういうデバイスがパソコンに取って代わるとか言われていますが,みなさんはどう思いますか。

浅井英二氏(ITmediaエンタープライズ編集長):
 昔の話をすると,東芝のGENIOを持っていたことがあります。PHSモジュールを横付けしたPDAです。でも,こうしたガジェット系をあまり長く使い続けることはありません。やはり,外出先で執筆することが多いので,ノートパソコンを使うことになります。

 自分のことを言うのもどうかと思いますが,私はカナ入力なのです。元月刊アスキー編集長の遠藤諭さんが親指シフトでしたが,カナ入力も今では珍しいと思いますよ。入力は速いし,外来語を入力するときの気持ち悪さもありません。こういう人間からすると,そもそも英語のQWERTY配列キーしかないPDAやスマートフォンが使いにくいのです。

 自分の好みは別としても,そこにはセグメントごとに最適なデバイスが存在する,ということは言えると思います。その点,クラウド,iPhone,あるいはAndroidというのは,実はつながっています。iPhoneやAndroidになると,サービスやコンテンツがネットから降ってきます。かつてのインターネットのチープなコンテンツの時代とは全く異なるものが降ってきますので,ここはクラウドとの組み合わせで非常に大きな力になると思います。

電話機を電話って言うのと同じで,私の子供はパソコンやiPod Touchのことをインターネットって呼ぶんですよ。結局,メールとWebにしか使っていないのですから,電話機を電話って呼ぶような感覚で,コンテンツとセットで捉えているようなのです。

浅井氏:私の子供は,Wi-Fi(ワイファイ)って言いますね。任天堂のゲーム機だと,「Wi-Fiつないでくれ」と言いますよ。Wi-Fiの向こうにプレーヤがいるんですけどね。

大野晋一氏(ZDNet Japan編集長):
 私は,こういう仕事をやっていながら,新しいテクノロジにはまったく興味がなくて,基本的に枯れたものが大好きです。あとは,フォーカスがはっきりしているものが好きです。ビジネスの場面で重要視していることですし,自分が使うものも全部そうあって欲しいと思います。パソコンも携帯も米Apple製なんですが,米Appleの製品って,そのあたりがしっかりしていると思っています。

 iPhoneに関して日本語入力の問題が指摘されますが(確かに問題はありますが),iPhoneを含む携帯でそんなに日本語を入力する必要があるのでしょうか? 自分がどう使っているかというと,「大野さん,これでいいですか」と送られてきた資料に,「OK」とか「NG」って返すだけです。長い文章を打つことはありません。それ以上のことはオフィスに戻ってPCでやるか直接伝えます。iPhoneは作る,編集するというところではなく,チェックして最低限のアクションを起こすところへのフォーカスがしっかりしています。

 クラウドにしても,会社の中のエンジニアに何を期待するかという話も,経営者が会社の個々のパーツごとのフォーカスをはっきりデザインしないと,かかわっている人が不幸になり,会社としても競争力を失ってしまいます。ある時点では,そのボーダーを越えることが競争力につながるかも知れません。しかし,まずはフォーカスをしっかり定めて今使っているIT技術やほかの経営リソースは自社にとってどういう価値を生み出しているのか,どういう価値を期待するのか,といったことをしっかり見直さなければなりません。iPhoneを使って思いました。