「携帯電話は,親や教師を悩ませています」──。本書はこの一文で始まる。まさにそのとおりであり,本質をとらえた一文だと思う。2008年6月に成立した「青少年ネット規制法」は,「親や教師は子どもが携帯電話をどう使っているかわからない」という前提のもとで生まれてきたからだ。

 本書はこのような携帯電話のことがわからない大人に向けた教科書である。本書がお薦めなのは,子どもに人気の三大サイト「モバゲータウン」「魔法のiらんど」「前略プロフィール」にアクセスしたことがない, 「プロフ」と「ブログ」の区別がつかない,といった大人である。第1章「子どもはケータイを何に使っているか」を読めば,子どもたちの利用実態を一通りつかむことができる。読み手に問いかけるように話が展開するので,ひっかからずに読み進むことができるだろう。

 類似本と違うのは,携帯電話/PHSのフィルタリング・サービスに一つの章を割いていること。その第4章「有害情報をどう規制するか」では,フィルタリングのしくみや課題をていねいに解説している。ただし,フィルタリングの技術は発展途上にあり,有害情報にまつわる議論もどんどんと深まっている。ついていけなくなる前に本書で学んでおきたい。

ケータイ世界の子どもたち

ケータイ世界の子どもたち
藤川 大祐著
講談社発行
756円(税込)