ヤナセの田中健執行役員情報システム管理部長

 メルセデスベンツやBMW、キャデラックなど様々な輸入車を販売するヤナセ。CIO(最高情報責任者)を務める執行役員の田中健情報システム管理部長は、情報システム部門のベテラン担当者が持つノウハウの継承に取り組んでいる。

 まず情報システム部門を2008年7月に改組した。改組に伴い、保守運用を委託する富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP、東京・江東区)へ約30人いたシステム担当者のうち、企画担当者を除く25人が出向になった。改組の狙いの1つは、現行の基幹システムの設計仕様や運用手順、ベースになる業務知識を富士通FIPと共同でドキュメント化することだ。現在、ヤナセの業務を下支えしている基幹業務システムは、2001年に刷新した「オートライン」。パッケージ製品をベースにしつつ、機能の4割はカスタマイズしたものだ。この中身を知り尽くしているベテランの退職が3~5年後に迫っている。

 若手や中堅世代にベテランが直接知識をスムーズに伝えることができたら、改組してまで形式知に取り組むことは無かったかもしれない。だが、「ヤナセにシステム開発を担当したくて入社してくる人は少ないだけに、IT(情報技術)に長年かけて取り組みたいという人材の確保が難しい」(田中部長)という事情から、文書として形式知化する取り組みを急いでいる。

 オートラインは、2010年までには刷新する予定。現行システムの課題の洗い出しといった現状分析はベテラン抜きでは困難なので、彼らが退職するまでに終えなければならない。保守運用を特定のITベンダーにあまり依存し過ぎると費用が高くつく危険性もあるので「コスト管理を強化するなどの対策を打ち出す」(田中部長)ことも今後の課題である。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・共感を得られやすいように数字と例え話をうまく使いながら話すように心がけています。「このシステムが1日止まってしまうと2000万円以上の売り上げが失う」といった具合に話します。やり過ぎて経営陣から「脅されている」と言われてしまうこともあります(笑)

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞や読売新聞
・自動車関連のメールマガジンも読んでいます

◆お勧めの本
・昔買った本を読み返しています。当時では理解し得なかったことが分かるようになってきました。夏目漱石の『こころ』などを読んでいます

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー、学会など
・日経情報ストラテジー主催のCIO勉強会など

◆ストレス解消法
・飼っている犬や鳥などが癒してくれています