システムの操作ミスやパラメータ設定の誤りといった「うっかりミス」に直面した経験があるIT技術者は7割に達する――。本誌のWeb調査でこんな結果が出た。開発系と思い込んで本番データを消す、ログオフするつもりがシャットダウンするなど操作ミスが目立つ。

 7月17日から24日にかけて「ITpro」で公開したアンケートに回答してもらう形で調査した。有効回答は184件。このうち、「うっかりミスをしたことがある」、あるいは「職場で見聞きしたことがあるか」との問いに「ある」と答えたのは127件と69%に達した。

図●「うっかりミス」を経験・見聞きしたIT技術者の割合とうっかりミスの具体例
図●「うっかりミス」を経験・見聞きしたIT技術者の割合とうっかりミスの具体例
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 調査ではうっかりミスの具体例も聞いた。システムの運用操作を間違えるケースが目立った。「開発系やテスト系のデータを削除するつもりが誤って本番系にアクセスして本番データを消した」という回答は複数件あった。

 正常に稼働していたシステムを誤操作でダウンさせたパターンも散見された。「あるサーバーを停止するはずが誤って別のサーバーに停止コマンドを投入した」「パッチファイルを適用する対象のシステムを間違えた」といった具合だ。

 データベースのバックアップ操作に関連する操作ミスもあった。「バックアップを取得してからデータを削除するはずがバックアップの前に削除した」「バックアップを取るはずがリストアした」といった事例である。

 Windowsで動作するシステムの運用作業の際に「ログオフするつもりがシャットダウンした」という回答もあった。日常の運用ではログオフを選んでいるために、Windowsを終了操作する際のデフォルト表示がログオフになっていると思い込んでいた。たまたま前日にシャットダウン操作をしたのでデフォルト表示が変わっていたが、それに気付かなかった。

 うっかりミスの事例は様々だが、なぜミスが起きたのかという原因には共通点がある。ミスを誘発するなんらかのきっかけ(要因)があったのだ。

 開発系と本番系を間違えたケースでは、両者の見分けがつきにくかった。本番系のサーバー名が「APSV001H」で、開発系が「APSV001K」といった具合に1文字しか違わなかったり、運用画面の色使いやデザインがほぼ同じだったため、うっかりミスを犯したという回答が実際にあった。開発系は本番系になるべく近い名称や表示にしたほうが開発作業やテストなどがスムーズに進むので、似ているのは仕方ない面はある。だがミスを誘発する原因になっているのは事実である。

 本誌7月15日号特集「うっかりミスは無くせる」でも取り上げたが、ミスの再発を防ぐには手作業の自動化など手順そのものを見直す必要がある。今回寄せられた回答のなかには、「オペレータがキーボードで入力していた運用コマンドを自動発行するようにした」など効果的な対策があった。

 一方で「チェックを二重化する」「複数人で確認する」など、抜本策とはいえない回答もあった。

 わずかなミスがシステムの全面ダウンをまねき経営に重大な影響を与える――。こうした事態を防ぐためにもシステム運用現場の抜本的な「うっかりミス」対策を急がなければならない。