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木下敏之の「自治体を変えるヒント」

第4回 「将来の人口推移を注視」「トップのIT能力を高める」――自治体CIOに望むこと

都道府県CIOフォーラム 年次総会 特別講演より

2008/09/29 日経BPガバメントテクノロジー

 私は市長時代、基幹系システムのダウンサイジングを計画策定から移行まで2年間という短い期間で実行しました。そのほかにも、黒字の市営ガスを約30億円で売却したり、様々な改革を進めました。「なぜそんなに急ぐのか」という声も聞かれましたが、改革を非常に急いだのには理由がありました。佐賀市の人口が、2000年から2050年までの50年間に人口が急激に減り、人口が半分になってしまうからです。

 人口が半分になるだけでなく、働く世代とほぼ同じ15~64歳までの人口が同時に急激に減ってしまいます。老人の数は増えなくても、税金を納める人がどんどん減ってしまえば、佐賀市の財政は構造的に破たんに向かっていきます。

 これからは、首都圏の自治体も高齢化問題をどうするかが深刻になってきます。地方の自治体は首都圏の金を当てにできなくなるのです。今の日本は高齢者の数がどんどん増えており、少子化対策によって子供が増えたとしても、今後、少なくとも30年~40年間はこの流れを止めることはできません。

 ですから、自治体のCIOの皆さんには、自分の自治体がどのようなポジションにあるのかを長期的に押さえておいてほしいと思います。国立社会保障・人口問題研究所のWebサイトに小地域簡易人口推計プログラムが公開されており、そこで2050年までの人口推移をシミュレーションできます。市町村がそれぞれどのような人口推移を遂げるのかを、ぜひ把握していただきたいと思います。

トップマネジメント層が具体的な指示を出していない

 もう一つCIOの皆さんにお願いしたいのが、回り道に見えても、首長などトップマネジメント層のIT能力が上がるよう働きかけていただくことです。

ここで言うIT能力とは、プログラムを組んだり、ホームページを作ったりする能力ではありません。ITを活用するとどのようなことができるか、他の分野の事例を勉強したうえで、その自治体のどの課題を解決するためにITを活用するのか具体的な方針を部下に示すことができる力のことです。欲を言えば、効果的なIT活用のために不可欠な「縦割りの壁の打破」や「仕事の枠組み自体の再構築」もトップでなければできないという意識や、「効果や安全性の確保と費用のバランスをどこで取るか」はトップの経営判断であるという認識があれば言うことはありません。

 申し上げたいのは、自治体の場合、トップマネジメント層がITを有効活用するための具体的な指示を出していないことが極めて多いということです。講演などでよく「どうITを活用したらよいのか」と聞かれます。ところが、逆にITを活用して何をしたいのかを聞くと、具体的な答えが返って来ないことが多いのです。ITを使ってコストダウンしたいのか、コストダウンよりも将来を見越してIT企業を育成したいのか、ITを活用して住民の利便性を上げたいのか。――トップがきちんと意識することが、自治体の情報化を進めるうえで最も重要なポイントとなります。ですから、CIOはトップマネジメント層にきちんとITの重要性を意識させることが、最も重要な仕事ということになります。

基幹系の共同化やIT人材の育成もできるはず

 市長時代、IT関連でやり残したこともたくさんあります。十分にBPR(ビジネスプロセス再構築)ができなかったところもあるし、バージョン管理が適切に行えるような仕組みもキチッと残せませんでした。

 特に残念だったのは、市同士で電算処理の共同化を進められなかったこと、そして、継続的に回る人材育成の仕組みを作れないままに終わってしまったことです。これらの取り組みは、いずれもトップマネジメント層でないと進められません。

 まずシステム共同化についてですが、当時は鳥栖市を中心にした組合や唐津市周辺の組合など、いくつかの電算共同利用組合がありました。こういったところに対して、佐賀市のシステムを提供するから共同利用しようと声をかけたのですが反応はありませんでした。

 佐賀市では、システムの著作権を持っているので共同で利用するときに自由が利くのですが、私がその後の選挙で負けてしまったこともあり、結局は実現できませんでした。しかし、基幹システムや税務事務を県内で一本化するといったことは、トップが話し合って調整すれば状況は変わるのです。

 IT人材については、職員に国際的に通用する資格を取らせたり、情報政策課に長期間在籍した後には人事上の評価や給料が上がるといった仕組みの準備をしなくては、うまく人材を育成することはできないだろうと私は考えています。(談)

 また、ITを使ってコストダウンしようというのであれば、業務改善のためのノウハウの研修も必要ですし、場合によっては首長を上回るような給料で優秀な人を雇うことも考えなくてはなりません。

 一口に地方自治体といってもそれぞれ異なるので、自治体によってトップがCIOに求めるものは違います。佐賀市のように人口が減少していて建設業と行政しか産業のないような自治体は、もしCIOを置くとするとIT企業の育成や誘致が第一になります。さらに、内部事務の効率化を行って前向きに投資するためのコストダウンを実現するという、極めて難しい要求をCIOに出すことになったと思います。

 しかし実際にはこのようなことを同時に実現できる人はたぶん企業の人材市場にもほとんどいないでしょう。また、今の自治体CIOの給料ではなかなか雇えないという問題があります。このような人材についての取り組みも、やはりトップでないと進められません。

 現場の業務改善も大切ですが、例えば共同化や人材育成のように大きな枠組みを変える方がはるかに大きな効果が出ます。そして、トップのIT能力によって、打つべき手/打てる手がまったく違ってきます。だからこそ、トップマネジメント層に近いCIOからの働きかけが重要なのです。

 また、これはCIOの守備範囲ではないと思いますが、学校におけるIT教育の充実を図ることについても、是非、関心を持っていただきたいと思います。アメリカやお隣の韓国と比べると小中学校や高校でのIT教育は、大きく立ち遅れています。地域の将来にとっては、ここに力をいれることが役所内部でのIT化以上に大事なことなのかもしれません。(談、構成:安藏 靖志=フリーライター)

* 「第6回 都道府県CIOフォーラム 年次総会」特別講演(2008年8月7日)より。

木下 敏之(きのした・としゆき)
木下敏之行政経営研究所代表・前佐賀市長
木下 敏之氏 1960年佐賀県佐賀市生まれ。東京大学法学部卒業後、農林水産省に入省。1999年3月、佐賀市長に39歳で初当選。2005年9月まで2期6年半市長を務め、市役所のIT化をはじめとする各種の行政改革を推し進めた。現在、様々な行革のノウハウを自治体に広げていくために、講演やコンサルティングなどの活動を幅広く行っている。東京財団の客員研究員も務める。『日本を二流IT国家にしないための十四か条』(日経BP社)、『なぜ、改革は必ず失敗するのか』(WAVE出版)。

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