都道府県間のシステム共同化については「団体ごとに考え方や更新時期が異なり難しい」という認識がこれまでは強かった。しかし、コスト削減要請の高まりや、道州制の動向をにらみ、今回のディスカッションのテーマとして選ばれた。

共通機能の共同利用を

 共同化には業務のすり合わせが必要だ。他方、各業務は自治体間競争の要素もある。アプリケーション部分は自治体ごとに作った方がよい面もあるのではないかというのは、福岡県企画・地域振興部情報政策課の望月昌樹情報企画監だ。

 「我々はシステムで利用する認証や連携などを、技術標準として平成15年から無償提供している。今までは認証や連携、バッチ処理や印刷などの機能は、システムごとに作っていた。その部分を共通で利用できる基盤へ部品として格納できれば、アプリケーションはあくまでもビジネスロジックだけになり、開発コストが下がるという考え方だ。APPLICの地域情報プラットフォーム標準仕様書のバージョン2が出たので、福岡県の技術標準も今後1~2年で作り替えていく」(望月氏)。

 システムを持たない“HARP構想”を掲げる北海道では、平成18年からASPによる電子申請の共同利用をスタートし、道内市町村のほか青森県でも利用されている。北海道企画振興部科学IT振興局の南壽博次長は「今後のバックオフィス系の共同化にあたっては、ネックは業務の共通化だと思う。市町村間や都道府県間の事務処理の差異は、職員の意識などに依存している部分が大きいと思う。それらの違いをある程度許容できるシステム作りを考える必要があるのではないか」とコメントした。

望月 昌樹氏の写真
福岡県
企画・地域振興部
情報政策課
情報企画監
望月 昌樹氏
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北海道企画振興部
科学IT振興局次長
南 壽博氏

パッケージを横展開する例も

 業務をシステムに合わせられるならば、パッケージソフトの横展開も考えられる。山形県情報企画課後藤紀夫電子県庁推進主幹は「コストという面では、都道府県はまだ認識が甘いのではないかと思っている。県内の市町村では、財政が苦しいためASPを利用し、できるだけカスタマイズせずに共同利用をスタートする予定になっている。だが都道府県レベルではなかなかそこまで進めないのが実情ではないか」と指摘する。また、愛知県地域振興部情報企画課の糟谷 寛和主幹は「市町村レベルの共同化では単独運用に比べてコストメリットはあるが、都道府県レベルになると、県ごとに考え方も違うため共同化は難しい。そこでパッケージの横展開が現実的ではないかと考えている」と語る。

 福井県総務部の津田博課長(情報システム最適化)は、「各都道府県のシステムを開発委託する際に、できるだけ汎用的にして、他団体でも利用できる仕組みにすることが重要だ。それを実現するためには、共通ルールやガイドラインを作るとよいのではないか」と提言する。

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山形県情報企画課
電子県庁推進主幹
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愛知県地域振興部
情報企画課主幹
糟谷 寛和氏
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福井県総務部課長
(情報システム最適化)
津田 博氏

 関連して、著作権を持つパッケージを他団体に提供した実績のある高知県と佐賀県がコメントした。

 「当県は第2期のダウンサイジングを平成19年9月に終了したが、ダウンサイジングの方式について特許を取った。事業者と一体になり、各県でパッケージソフト形式で提供している。各県から照会があれば出向いて説明している。システムの利使用料については、平成14年度に事務処理要項を作成しており、県に入る利用料は基本的に10%以内としている」(高知県政策企画部情報政策課の川上博正課長補佐)。

 「当県も台帳管理システムにおいて同様の取り組みを行っており、利用料を5%と設定した。事業者の選定は、透明性や公平性の高さに配慮した手続きを踏むことに留意した。システム構築時には、行政側が付加価値を付与する共同開発的な過程を経ることが多いためだ」(佐賀県の川島宏一最高情報統括監)。

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高知県政策企画部
情報政策課課長補佐
川上 博正氏
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佐賀県
最高情報統括監(CIO)
川島 宏一氏