大分県企画振興部 IT推進課課長 山戸 康弘氏 |
初日に行われたディスカッションのテーマは「LGWAN(総合行政ネットワーク)」。ディスカッションに先立ち、総合行政ネットワーク運営協議会幹事会の代表幹事である大分県企画振興部IT推進課の山戸康弘課長による講演が行われた。
講演で山戸課長はまず、LGWANの運営体制、ネットワーク構造、セキュリティ対策、アプリケーション、運用コストなどの基本事項の現状をあらためて概説した。そして、幹事会では現在、平成24年に開始予定の第3次計画の検討を進めていることを紹介した。
商用サービス利用も視野に
ディスカッションでは、中長期的な今後の方向性を中心に意見交換が行われた。
まず、コスト面も含めた運用の最適化については、ネットワーク構造のあり方にまで踏み込んで検討する必要があるという問題意識で議論が進んでいった。
神奈川県総務部三科清高IT担当部長 は「LGWANがスタートした頃と比べるとサービスが充実しているので、今後バックボーン回線として商用のサービスを利用するのは一つの方向だと思う。LGWANのセキュリティをどのレベルにするかは、利用する中身で判断する問題だろう。バックボーンをどうするべきかという議論からではなく、両方を合わせて考えるべきではないか」とコメントする。
熊本県地域振興部情報企画課の島田政次情報企画監は「ネットワークのあり方を変えないと、コスト構造に踏み込めないのではないかと考えている。例えば全国NOCは霞が関WANまで含めた48の結線を監視し、それ以下は県域ネットワークの中で監視するといった形も考えられるのではないか」と提言する。
広島県の中山章情報システム総括監も近い意見だ。「現在の全国NOC(アクセスポイント)を中心にした県・市区町村という3層構造のネットワークは、設計当時は合理性があったかと思うが、今の状況を考えると、再考の余地もあるのではないか。また、今後についてはNGNなどの商用サービスも視野に検討すべきだ」(中山氏)。
運営のあり方について提言もあった。長野県企画部情報統計課の岡庭亮主査は「個人的な考えだが、一部事務組合のような形の組織に職員を出し合うなどして、都道府県職員が実態をふまえながら素案を作り、ベンダーとの交渉や運営主体との調整、各都道府県の意見集約などといったスキームが作れるとよいのではないかと思う」と述べた。
国のシステムにおいては、自治体とのやりとりにLGWANを使っていない例がまだまだある。「LGWANを使えば、国のシステムの専用回線を廃止できるようになり、コスト削減につながる。(国のシステムが)LGWANを使う上でどのような障害があるのかなどについて、LASDECや総務省とも意見交換をしながら、基本的にはLGWANを使って国のシステムと区市町村の端末とがつながるという本来の形を作り上げていただければと思う」と東京都情報システム部の川村和也副参事(情報通信担当)は語る。このように、国における利用促進についての提言もいくつかなされた。
LGWANという共通の行政ネットワークをどう有効活用するかという点については、「都道府県間の共同利用に上手く使っていく方法として、民間のASPとしての利用に活路を見出すべきなのではないか」(岐阜県総合企画部の鈴木 正司次長〔情報化推進担当〕)と提言する。これを受けて都道府県CIOフォーラム会長で茨城県企画部の前田正文情報化統括監は「(SaaS/ASPの)サービスを提供する側の民間企業の意見も聞きながら、LGWANをより活用していくための検討を進めていくべき」と訴え、ディスカッションを締めくくった。
なお、このディスカッションでの討議内容は、運営協議会にフィードバックされることになっている。