記者が利用しているノート・パソコンは5年前に購入したものだ。そろそろ買い替えを考えているのだが,踏み切れないでいる。有償の修理に2回ほど出したし,バッテリーも交換したり(それも量販店での扱いが終了したためメーカーから定価で購入)などと維持費用もかかっている。いま流行のUMPCが買えるくらいの金額だ。それでも買い替えないのは,現在の環境を引っ越すのが面倒だからだ。

 5年も利用しているとインストールするアプリケーションは増えていき,キー操作などをカスタマイズするなどしており,もはや新しい機種に同じ環境を構築するとなるとかなりの手間だ。CD-ROMはあっても,ライセンス・コードがが行方不明になっているアプリケーションもある。ネットから入手したソフトなどは,配布元のサイトが閉まっていることもある。実は,これと似た事情で携帯電話の買い替えもためらっている。

 記者はどちらかと言えばガジェット好き。PDAや電子辞書などは新製品が出ると真っ先に購入する人柱系だ。携帯電話も例外でなく,GPSだのワンセグだのと新しい機能を搭載した製品が登場するごとに機種変更を繰り返してきた。

 それが,最近では機種変更をしようという気力が失せてきた。特に魅力的な新製品がなくなったという訳ではない。新モデル発表の記事を見るたびに「いいな」と思う機種もたくさんある。その理由を自分なりに分析してみると,どうやら原因は「おサイフケータイ」にあることが分かった。

 記者のおサイフケータイには,電子マネーが3種類入っている。JR東日本のSuicaに会社周辺のコンビニで使える電子マネー,そして自宅近くのコンビニで使える電子マネーだ。電子マネー以外にも家電量販店のポイント・カードにおサイフケータイを利用している。この家電量販店で買い物をするときは携帯電話の電子マネーで支払い,同じ携帯電話でポイントをためている。支払いもポイントカードの提示も携帯電話だけで済ませるという具合に,おサイケケータイが大活躍。ほかにもJR東海の東海道新幹線や全日空の予約と搭乗にもおサイフケータイを利用しており,かなりのヘビーユーザーではないかと自負している。

 もし今使っている携帯電話を機種変更するとなると,これらの電子マネーやらポイント・カードのすべての引っ越しをしなければならない。東海道新幹線のサービスはモバイルSuicaと,全日空のサービスはEdyと連携している。とはいえ,サービスの提供会社は異なるので,契約はJR東海や全日空と行う必要がある。

 ここでふと心配になったのが,iPhoneやスマート・フォンといった高機能な携帯電話のこと。これらの機種にはアプリケーションがどんどんインストールできるため,いずれユーザー固有の環境になるはず。つまり自分なりの環境を構築したパソコンと同じだ。これにおサイフケータイや,今後登場するであろう新サービスなどがからんできたら,機種変更は数日がかりの一大イベントになってしまう。記者のような面倒くさがりでなくても,機種変更をちゅうちょする人も出てくるのでは。

 メーカーや携帯電話会社が次々と高機能な機種やサービスを投入する目的の一つは機種変更の促進のはず。それが,かえって機種のライフ・サイクルを伸ばすことになるのではと個人的に心配している。それとも,あまり長く使いすぎて環境が迷宮化するまえに,さっさと買い替えてくださいとのメーカーの親切心なのだろうか。