今回から「受発注システム」を想定して,データモデルを発注者と合意するためのコツを詳細に説明していきましょう。

 前回述べたように,データモデルは発注者にとって難しいものです。このため,詳細なデータモデリングに進んだ時点からいきなりレビューを始めるのではなく,発注者と開発者の双方の理解できる,データモデルの概要がわかる全体図を使ってレビューを始めます。

 最初に発注者と開発者がデータモデルの全体像を共有していれば,これがデータモデルの予備知識となり,後に続くレビューをスムーズに実施できるようになります。今回は,データモデルのレビューに欠かせない,2つの全体図を紹介しましょう。

概要図でエンティティの候補を確認する

 まずデータモデリングの第一段階として,対象となるシステムにはどのような業務があり,それにはどのようなデータが結びついていて,お互いにどのような関連を持っているのかというデータモデルの全体構成がつかめる概要図を作成します。

 具体的には,RFP(提案依頼書)や要求定義書の内容に基づいて,「販売業務」や「経理業務」などの業務ごとに,エンティティ(データのまとまり)の候補を配置します。帳票とエンティティ候補との関連も記述しておきます((図1)。

図1●データモデルの概要を業務レベルでまとめた例
図1●データモデルの概要を業務レベルでまとめた例
複数の業務で同じエンティティが候補に挙げられていれば,そのエンティティが業務間の連携に使われることが分かる。
[画像のクリックで拡大表示]

 この図を使って発注者に,担当業務で扱うエンティティ候補を確認してもらいます。業務ごとにエンティティの候補が記述されているので,発注者は自分の関係する業務に集中して確認でき,エンティティの過不足や不整合を発見しやすくなります。

 図1には,「商品情報」というエンティティ候補が,「販売業務」「経理業務」「業務共通」という3つの業務に現れています。このように,複数の業務で同じエンティティが候補に挙げられた場合,それが業務間の連携に使われるエンティティであることが分かります。図1のような概要図を作成することで,業務間の連携で用いるエンティティも特定しやすくなるわけです。