「もともとは『社内業務の生産性向上』を目的に始めたこの取り組みで,CO2削減効果を得られるとは,正直思いもしなかった」。こう語るのは,三菱UFJフィナンシャル・グループの情報システム会社,UFJISの千貫素成氏(ITプロデュース部 部長)である。

写真1●大型ディスプレイを使った会議システム
写真1●大型ディスプレイを使った会議システム
最大解像度1920×1200ドットの液晶ディスプレイを複数備えているオフィスの打ち合わせスペースに設置した会議システム。三方を向いたそれぞれのディスプレイの前に2,3人のメンバーが座り,取り囲んで打ち合わせを行う
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 千貫氏は,グループ企業が利用するサーバーやネットワーク,PCといった情報システムのインフラ整備を担当している。千貫氏が話す「この取り組み」とは,画面サイズ23インチ,最大解像度1920×1200ドットの液晶ディスプレイを複数備える会議システムを独自に開発し,UFJIS社内の会議室や打ち合わせスペースに展開してきたことだ(写真1)。

 UFJISでは2005年から2年ほどかけて,この会議システムを,十数室ある社内の会議室に1セットずつ,ITエンジニアが作業を進めるオフィスの打ち合わせスペースに40セット配置してきた。このシステムを活用することで社内会議のペーパーレス化を推進。これにより,「資料を印刷するコピー用紙を利用した時に比べて,社内全体で年間約19トンのCO2を削減できる」(千貫氏)という。

A3サイズ大の資料を表示させマウスで指示

 この会議システムには,複数の大型ディスプレイと複数のワイヤレスマウス,キーボードが装備されている。

 複数ある大型ディスプレイには,同じ画面が表示されるようになっており,会議の参加者はPowerPointやExcelなどで作成した会議用の資料を表示できる。「従来の会議ではA3サイズに印刷していた資料を,画面をスクロールすることなく表示できる。紙に印刷したのと同じ解像度で表示されるので,資料の文字を読めないといったストレスが起こることなく会議を進められる」と千貫氏は説明する。

写真2●会議システムに付属するワイヤレスマウス
写真2●会議システムに付属するワイヤレスマウス
会議中,参加者は手元にあるワイヤレスマウスを使って,画面上のポインタを動かしながら議論を進められるようになっている。キーボードも付属されており,その場で議事録などを作成できる
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 会議室や打ち合わせスペースの机や椅子は,会議の参加者2,3人が大型ディスプレイ1台を見られるように,配置されている。会議で資料の内容を説明する参加者は,手元にあるワイヤレスマウスで,資料の中のデータを指示しながら説明できる(写真2)。マウスでは資料の中の一部を強調表示させることも可能だ。「会議の発言者が資料をマウスで指示しながら説明すると,他の参加者の画面にも同じ内容が表示されるため,議論に集中しやすくなった」と千貫氏は効果を語る。

 紙に印刷した資料を使っていた従来の会議では,説明者は「資料の2枚目の上から3行目を見てください」と参加者に伝えながら,説明や議論をする必要があった。この会議システムでは,「画面上で注目してもらいたい点を,マウスでぱっと示せるので,すぐに説明や議論を始められる」(千貫氏)という。

 会議システムにはワイヤレスマウスを複数備えている。複数あることで,会議の参加者の1人がマウスを使って説明したあと,別の参加者が手元のマウスで資料の個所を指示して質問する,といったことができる。キーボードは,表示した資料の内容をその場で修正したり,議事録を作成したりする時に利用する。