「これから組み込みソフト開発に取り組むWindowsプログラマ」を対象に,組み込みLinuxを用いた開発の基本について解説します。第5回は,組み込みLinux用のプログラムを記述するためのテキストエディタについて紹介します。

 ソフトウエアを開発するためには,当然のことながら,最初にソースコードを書かなければなりません。そのための道具として,よく使われる代表的なテキストエディタを紹介します。

プログラミングに使われるエディタ

 Windowsにおけるプログラムの開発では,「Visual Studio」に標準で備わるエディタを使う場合が圧倒的に多いと言えるでしょう。一方,Linuxでは,主なテキストエディタとして「gedit」「vi」「Emacs」があります。

 現在広く利用されているLinuxディストリビューションの多く,例えばRed Hat Enterprise LinuxやSUSE Linux,CentOS,Ubuntuなどには,geditというエディタが標準で備わっています。これは,Windowsの「メモ帳」に相当する比較的シンプルなテキストエディタです。特別な操作を覚える必要もなく使えますが,プログラミング向けの機能は,デフォルトでは,キーワードに色を付けるぐらいしかありません(図1)。

 このgeditを用いたプログラミング例については,Windowsプログラマに贈るLinuxプログラミング入門「第6回 LinuxでC/C++言語のコンパイルを試す」が参考になります。

図1●geditの画面
図1●geditの画面

 Linuxでプログラミング用によく使われるテキストエディタは「vi」と「Emacs」です。インデントや補完機能など,プログラミングをするときに便利な機能を備えています。Linuxでプログラミングを行う際には,いずれかの使い方を覚えておきたいものです。

GUIがなくても使える軽量・高機能エディタ「vi」

 viは,GUI(Graphical User Interface)のない端末(あるいはX Window System上の端末エミュレータ)からも使える,軽量で高機能なテキストエディタです。

 端末から「vi <ファイル名>」と入力することでファイルを開きます(図2)。編集するためには,モードを切り換える必要があるなど,独特の操作体系を持っています。しかし,一度慣れてしまうと,サイズの軽量さと動作の軽快さから手放せなくなり,特に組み込み開発では広く使われているようです。

 viの基本的な操作方法については,Windowsプログラマに贈るLinuxプログラミング入門「第8回 viエディタ入門」を参考にしてください。

図2●viの画面
図2●viの画面

 ここでは,プログラミングに便利な機能を紹介します。

●カーソル移動キー
 カーソルの移動キーとして便利なのは「%」です。対応する括弧(かっこ)の位置までジャンプします。

 さらに,viは,Visual Studioのように,長い変数の入力補完機能や,関数・変数定義にジャンプするという便利な機能も備えています。

●入力補完機能
 入力モードで「ctrl-n」(Ctrlキーを押さえながら,nキーを押す),もしくは「ctrl-p」(Ctrlキーを押さえながら,pキーを押す)を押すことで,入力の補完がされます。

●関数・変数定義ジャンプ機能
 関数や変数が定義されている場所にジャンプする機能も備えます。ジャンプするためには「ctrl+]」を押下します。元に戻るには「ctrl-t」を押します(図3)。

図3●viでの関数定義へのジャンプの例
図3●viでの関数定義へのジャンプの例

 ただし,ジャンプ機能を使うためには,ctagsコマンドを用いて,tagsという関数定義を記録したファイルを作成しておく必要があります。作成中のプログラムのソースコードが格納されているディレクトリ(言い換えれば,プログラミング作業中のカレント・ディレクトリ)にて,「ctags -R <ファイル名>」とコマンドを入力します。すると,tagsというファイルが生成されます。viはこのtagsファイルを参照して,ジャンプ処理を行います。