写真●矢澤 篤志氏 カシオ計算機 執行役員 業務開発部長
写真●矢澤 篤志氏 カシオ計算機 執行役員 業務開発部長
(写真:清水 盟貴)

 「自前主義」で情報化を進める。これが我々の基本方針だ。特にシステム企画などの上流工程は、他人任せにはできない。こう考えているのには理由がある。普段から経営トップに「経営に貢献できるIT部門になれ」と言われているからだ。

 社内のシステム担当者や利用部門の担当者が手掛ける方が、外部のITベンダーに任せるよりも、当社にとって最適なシステムを素早く整備できる。競争力の向上につながるシステムも構築しやすい。社内スタッフは、外部のITベンダーの担当者に比べ、事業戦略や業務プロセス、社内システムに詳しいからだ。

 経営が刻々と変化する状況にあって、情報化の速度を上げるのは重要な課題。昔はいったん作ったシステムを10年以上使うこともざらだったが、最近は3~5年周期で大幅に改修するケースが増えている。

 システム再構築が必要という場合、多くの業務を国内のSIerに任せたいところだが、正直、頼りになるところがなかなか見つからない。

 ITトレンドの先取りという点で、国内の大手SIerは3年以上、外資系のITベンダーに遅れをとっているように感じる。国内の大手SIerは、先進的な技術をキャッチアップできていないのではないか。もう少し早い時期から、新しい技術や製品に目を向け、実際に使ってみて、どのようなものかを検証すべきだろう。それがITのプロだと思うのだ。

 自らが、新しい技術や製品を“実験”してみないと、ユーザー企業にどのようなメリットをもたらすものかを把握したり、弱点を見つけ出したりすることはできないはずだ。こうした努力なしに、ユーザー企業が納得できるような提案を出すことは不可能である。

 例えば、仮想化技術やSOA(サービス指向アーキテクチャ)。これらの分野に、外資系のITベンダーは早くから取り組み、着実にユーザー事例を増やし、導入ノウハウを蓄積しているように見える。ところが、国内のSIerは進化していないようである。4年ほど前に国内のSIerから仮想化技術やSOAの説明を受けたことがあったが、最近話している内容とほとんど変わっていないからだ。

 目を引くようなユーザー事例も増えていない。導入スキルも向上していないのではないだろうか。これでは頼りなくて、仮想化やSOAを実現するためのプロジェクトを任せようという気になれない。実際に我々は、仮想化技術を採用したサーバー統合プロジェクトを自力で進めた。当社のシステム担当者が海外のユーザー事例を研究するなどして、なんとかプロジェクトを成功させることができた。

 ソリューションプロバイダには、技術力や提案力という以前の注文がある。もっと当社に足を運んでいただきたい。ITベンダーの営業担当者が訪れる回数は減っている。自前主義といっても、外部にお願いしたい業務はたくさんある。腕試しするぐらいの気持ちで、どんどん提案書を持ってきてもらいたい。

 優れた提案をするところだと分かれば、ITベンダーの規模や知名度には全くこだわらず、パートナー関係を結ぶ。これまでも、比較的新しい製品や技術を導入する場合に、ベンチャー企業と手を組んだことがあった。小規模の会社は明確な強みを持っているし、全力でプロジェクトに取り組んでくれることが多い。仕事にスピード感もあるのがいい。(談)