著者は東日本旅客鉄道(JR東日本)の執行役員。ICカード乗車券・電子マネーとして3000万枚以上も普及した「Suica(スイカ)」の開発を現場で指揮した。1980年代後半からの開発の経緯を丹念に描く。

 組織・事業面でのシステム開発上の障壁を乗り越える過程を振り返る。カードと駅の自動改札機が通信するための無線免許をどう取得するか,改札処理時間をいかに速くするかといった,目に見えない課題を解決していく様子が興味深い。

 約460億円の投資額をどう回収するかという社内調整にも触れている。不正乗車防止効果などは「却下」され,自動改札機の保守コスト削減分を細かく洗い出してようやくゴーサインが出たという。

Suicaが世界を変える

Suicaが世界を変える JR東日本が起こす生活革命
椎橋 章夫著
東京新聞出版局発行
1200円(税込)