Vistaが普及して,IPv6を使った環境が本格的に広まると,Windowsネットワークを実現するしくみにも大きな影響を与えることになる。これまでWindowsネットワークを実現する中心的なプロトコルとなっていたNetBIOSは,IPv4しかサポートしておらず,IPv6環境では利用できないからだ。つまり,Windowsネットワークで重要な役割を担っていたNetBIOSを使った名前解決やブラウジングがIPv6では使えなくなる。
Windowsネットの三大機能をIPv6で使えるように拡張
そこで,IPv6を標準プロトコルに位置付けたVistaでは,これまでNetBIOSで提供してきた機能を代替するような新しいサービスが取り入れられている(図5)。これまでの連載で紹介してきた各種の機能がそれぞれ該当する。Windowsの三大機能である「ブラウジング」,「名前解決」,「ファイル共有」の順に見ていこう。
まず,ネットワーク上にあるWindowsコンピュータを一覧表示する「ブラウジング」機能では,NetBIOSのブラウジングに代わる機能として,SSDPやWS-Discoveryという機器を探索・発見するためのプロトコルが備わった。これらのプロトコルを使うと,Vistaパソコンをはじめとして,ネットワークに接続されているルーターやプリンタ,スキャナといった機器についての情報も収集して一覧表示されるようになる。
Vistaにはネットワーク・マップ作成機能もあり,ネットワークの構成や接続されている機器に関する配置マップを作成してくれる。このネットワーク・マップの作成には,近隣探索プロトコルであるLLTDを利用している。このプロトコルは,Vistaではじめて標準搭載されたものだが,XPでも,マイクロソフトのWebサイトから入手して追加インストールすることが可能だ。
コンピュータ名からIPアドレスを調べる「名前解決」にはLLMNRという新しいプロトコルが追加された。LLMNRはマルチキャストを活用することで名前解決の機能を実現する。IPv4/IPv6のどちらでも使え,これまでのNetBIOSのようにブロードキャストを使わなくても名前解決ができる。
また,DNSのIPv6対応も二つの点で改善されている。一つは,VistaのDNSクライアントでDNSサーバーとの通信にIPv6も使用するようになったことである。もう一つは,DNSサーバーからAレコードとAAAAレコードの両方が返ってきた場合に,AAAAレコードを優先して使用するようになっている点である。ここでも,IPv6が優先されるようになっていることがわかる。