Vistaの登場から,すでに1年以上が経過した。Vistaの普及状況についてはいろいろな報道があるが,これから徐々に広まっていくことは間違いないだろう。今春にはサーバーOSの新版である「Windows Server 2008」のリリースも控えている。今回は,VistaやServer 2008といった新しいWindowsが普及すると,これからのWindowsネットワークがどのように変わっていくのかを探ってみよう。

 Vistaには,今回の連載で見てきた内容をはじめとして,ネットワーク機能に多くの変更が加えられている。中でもWindowsネットワーク全体に大きく影響を与えそうな変更点は,IPv6への標準対応だろう。VistaはIPv6に標準対応したはじめてのWindowsである。

VistaではIPv6に“本気”で対応

 Vista以前のWindows 2000やXPでもIPv6を使用することはできた。ただし,標準では組み込まれず,ユーザー自身が手作業で追加インストールを実行する必要があった。IPv6関連の設定に関しても,コマンド・ライン・ツールを使って実行するしか方法がなく,お世辞にも使いやすいものとはいえなかった。これらのWindowsでは,IPv6はあくまで追加コンポーネントという扱いで,TCP/IP向けのツールやサービスについてもIPv6には対応していないものが多かった。

 これに対し,VistaはIPv6時代の到来を先取りしてIPv6に標準対応した。ユーザーはインストールや設定などの作業を改めて実行しなくとも,IPv6での通信が可能な状態になる。起動しただけで,これまで広く使われてきたIPv4と並んで,自動的にIPv6アドレスが割り当てられる。実際に,Vistaのコマンド・プロンプト上でipconfigコマンドを実行してみると,割り当てられたIPv6アドレスが確認できる(図1)。

図1●Vistaでipconfigコマンドを実行するとIPv6アドレスを確認できる<br>標準で3種類のIPv6アドレスを自動作成する。
図1●Vistaでipconfigコマンドを実行するとIPv6アドレスを確認できる
標準で3種類のIPv6アドレスを自動作成する。
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 IPv6用の設定画面も標準で用意されており,IPv6のアドレスやDNSについての情報をGUIから設定できる。多くのTCP/IP向けのツールやサービスについても,IPv6とIPv4の両方に対して使えるように拡張されている。IPv6をはじめて利用するユーザーにとって,Vistaでは大幅に敷居が低くなった。

 それどころか,むしろVistaではIPv4よりもIPv6が標準とさえいえる扱いをしている。例えば,通信相手との間でIPv6とIPv4のどちらでも通信が可能な場合には,IPv6による通信を優先して実行する。これまでのWindowsと比べて,VistaではIPv6を利用するための環境が“本気”で整えられているといえるだろう。