フリーマーケット(以下フリマ)が盛んである。私自身は初めてフリマに行ってもう10年以上になる。毎回,リサイクル運動の発達を写真などの記録に残そうという高尚な意図を持って出かけるのだが,つい買い物に夢中になってしまう。おかげで部屋の中はすぐには使わない品物や,どう考えても使いようがないガラクタで一杯である。おまけにまともな写真が少なく才能のなさを痛感している。

 それでも長年出かけているとフリマの地域特性のようなものも見えてきて,それなりに分析もできるようにはなってきた。代々木公園(東京都渋谷区)や野村ビル(同新宿区)のようにビンテージ物(時代物)やコレクターズ・アイテム(収集家向けの希少品)中心の場所,錦糸公園(同墨田区)やJR北千住駅近く(同足立区)のように雑貨中心の場所と,探す物によっても違ってくる。

 売っている人の年齢も多様である。隅田公園(同台東区)で小さな子供が声を張り上げているかと思えば,錦糸公園では80歳のおばあちゃんに出会い,代々木公園では当世風の若者がおり,実に実に多様性に富んでいる。茨城県の土浦や筑波あたりのフリマでは,子供が捕ってきたカブトムシなんかを売っていることもあるし,コレクションの盆栽を出している年輩の方もいる。

フリマには地域の特性が現れる

 各地のフリマを見ると独自性が見え隠れするが,諸外国と比べるとトータルとしての日本の特性も出ている。例えば,地べたに(といっても,もちろん下にカバーを敷いているが)品物を広げるのはアジア的だが,並べられている品物はヨーロッパに近い。和洋折衷である。座り方もヨーロッパ人のようにいすを持ってきている人は少なく,それでいて中国人のような立てひざではなく,あぐらをかいても東南アジア系でみられる座禅のような見事な形ではない。なんとも中途半端で,なんとも日本的なのである。

 「フリマ」の存在に気がつき,通い始めた頃は,会場数も限定されており毎週開かれていたわけでもなかった。大きな所では代々木公園と明治公園(同新宿区)ぐらいであろう。それでも当時,知り合った出店者によれば,それよりもさらに5~6年前,フリマを最初に立ち上げた頃にはお客はおろか出店者も少なく,スタッフが知り合いに頼んで店を出してもらっていたそうである。それが現在,関東近郊で毎週たくさんの数のフリマが開催されている。ためしに把握している範囲で今年6月22日の日曜日,7都県で開催予定のフリマ会場を数えてみたところ50カ所に達した。

 フリマの空間は,単にリサイクル品の処分だけでなく,商売をしてみたい人にとっての疑似空間ともなっている。双方の駆け引きはそばで見ているだけでも愉快である。別段高価なわけでもなく,まけてもらう必要性などなくてもフリマでは「まけろ」と一言言ってみたくなるのであろう。一度など10円の品物を5円に負けろと言っているのを見かけたこともある。売る方も買う方もいたって真剣なのだが,端で見ていると喜劇でしかない。この人は普段は5円が落ちても拾わないかもしれないのに。