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日経SYSTEMS

[IT業界の弱者]非常識な「検収」で大赤字

2008/09/25
日経SYSTEMS取材班
出典:日経SYSTEMS 2007年4月号  p.265
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 最後は,社員数人のソフトハウスを経営する長谷川正行さん(仮名)。長谷川さんは,ある独立行政法人のシステム構築プロジェクトを元請けで受注することができた。経験のないJavaで開発するシステムだったので,プログラム開発は別のソフトハウスに依頼した。その下請けの担当エンジニアらが優秀だったこともあり,システム構築は順調そのもの。プロジェクトの最後に当たる,検収作業(完成したシステムをユーザー側で確認すること)まで一気に進んだ。

1年後に大幅な変更を要求される

 ところが,待てども待てども検収結果が届かない。お客さんの立場もあることだし,「いつごろ終わりますか」なんて切り出せない。契約上のプロジェクトの完了は,ほぼ1年後の年度末になっている。長谷川さんは待つしかなかった。うわさでは一部の業務で,納めたシステムが利用され始めたと聞き,検収してOKが出たものだと思い込んでいた。

 そして年度末が近づいたある日,長谷川さんは突然呼び出され,検収結果を告げられる。どうやら独立行政法人の担当者は,検収に着手せず放ったらかしにし,年度末が近づいて慌てて実施したようだ。

 しかもその内容は,「仕様と違う。バグなので修正してもらいたい。納品されたシステムはデータのソート(並べ替え)対象を一部に限定しているが,もっと多くの項目でソートできるようになっていなければならない」というものだった。長谷川さんは開いた口がふさがらなかった。

 納品してから1年近くも経って,今さら「仕様と異なるので修正してくれ」とは常軌を逸している。仕様の確認など上流工程でやっており,それに基づいてシステムを作っている。にもかかわらず,今になって「バグだ」と主張される。こんなことが許されるはずがない。『不当な要求だ』と感じたが,検収完了印をもらえなければプロジェクトは完了したことにならず,費用は支払われない。

 長谷川さんは怒りを抑えて要求を飲み,下請けのソフトハウスにプログラムの修正を依頼した。だが運の悪いことに,開発を担当したプログラマらは既に転職し,会社を離れていた。別のプログラマが代わりに受け持ってくれたが,修正作業は難航した。ソートの対象範囲を変更するには,データベースのテーブルやアプリケーションのロジックを見直すといった,大掛かりな修正が必要だったからだ。

 検収作業をあれほど放ったらかしていたにもかかわらず,独立行政法人の担当者は「まだ修正が終わらないのか。早くしてくれ」と,毎日のように長谷川さんをせかしはじめる。『システムを納めた時点で検収してもらえたら,こんなことにはならなかったんだ』。そう言いたいのをぐっと我慢し,下請けからの報告を待った。

 しばらくして,独立行政法人の担当者は新たな要求を突きつけてきた。プログラムの修正作業を(Javaの実績の豊富な)大手のシステム・インテグレータに依頼するよう,長谷川さんに強く迫ったのだ。そんなことをすると追加費用が発生し,プロジェクトは大赤字になる。だがほかに方法はなく,言いなりになるしかなかった。

人任せから脱却するため猛勉強

 このプロジェクトの後,長谷川さんは考え方を変えた。営業活動の時間を減らし,最新の開発技術を必死に習得し始めた。「あのプロジェクトでは,自分のスキルの低さを他人のスキルでカバーしようとして失敗した。人に頼らなくても自分だけで問題を解決できるようになる必要がある」。今では技術に対する自信も深まった。

 経験のない技術を使う案件には手を出せないでいたが,勉強の甲斐あって技術力が身に付き,自分で自信を持って取り組める案件の幅が広がった。次第に多くのプロジェクトに参加できるようになり,小さなプロジェクトで黒字を積み重ね,「最近,会社の負債をゼロにできた」と顔もほころんだ。

長谷川 正行さん(仮名)
長谷川 正行さん(仮名) ソフトハウスを経営する43歳のプロジェクト・マネージャ。独立行政法人向けのWebシステム開発プロジェクトを元請けとして受注することに成功。別のソフトハウスに,開発作業を委託してプロジェクトを開始

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