2007年の後半からベンダー主導で進められてきたグリーンIT。現在は,いよいよユーザーの成果が見えてくる“実践期”に入ったと言われるが,「うまくいっている」という声はなかなか聞こえてこない。

 「ユーザーの多くは,『グリーンITとは何か』,『具体的に何をすればよいのか』をよく分かっておらず,まだ混乱している状況」――こう語るのは,ガートナー ジャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ担当バイスプレジデントの亦賀忠明氏だ。

 亦賀氏によれば,新しいテクノロジが生まれると,その認知度と成熟度は時間とともに変化し,ある特徴的なカーブ(ハイプ曲線)を描いて変遷していくという。グリーンITをこの曲線に当てはめると,昨年は省電力サーバーという話題から入って認知度がどんどん高まり,現在は過度な期待によって“ピーク期”を迎えつつある。

 「来年には下りカーブに差し掛かり,幻滅期に入るだろう。ITユーザーが,現在のように何をすればよいのか分からない状態が続けば,幻滅期から安定期への移行がうまくいかず,普及の気運が衰えてしまう恐れがある」と亦賀氏は危惧する。

まず,「実態を知ること」から

 企業においてグリーンITを推進する核となるのは情報システム部門。ここが取り組みに向けた足固めをしなければ,何も変わらない。では,何から始めればよいのか。

 企業活動において問題を解決するには,まず現状を知ることから始める。グリーンITを推進する場合も,自社の環境対策の中での位置づけや,IT機器や設備の電力消費の現状と削減目標を確認することから始めるべきだろう。

 アクセンチュアは,ITが環境に貢献するという側面から,グリーンITへの取り組みを「調達」,「オフィス環境」,「データセンター」,「ワーキングプラクティス」,「コーポレートシチズンシップ」の5つの領域に分けて進めることを提唱している(関連記事)。さらに,5つの領域ごとにITの貢献度を評価する「GMM診断」ツールを開発し,顧客に提供している。

 一方,アビームコンサルティングは,企業経営におけるエネルギー・リスクの観点から,グリーンITの重要性を説く。「環境規制やエネルギー価格の高騰などは,企業経営にとって大きなリスク。ただしリスクをバラバラに捉えるのではなく,事業のライフサイクル全体を俯瞰し,リスクとチャンスがどこにあるかを把握することから始めるべき」と,山本英夫シニアマネージャーは指摘する。その上で,会社全体のCO2排出量の削減目標と戦略を立て,継続的な省エネを実施していく必要がある。同社では,こうした取り組みを支援するため,「エネルギーマネジメント診断」ツールを提供している。

 グリーンITの捉え方に違いはあるものの,各社ともまず最初に「現状把握」の重要性を訴える。と言うのも,グリーンITを効果的に進めるカギはマネジメントシステムにあるからだ。

 「省電力サーバーに置き換える」,「ラックの位置を変える」といった単発の対策だけでグリーンITは完成しない。電力消費やCO2排出量の現状を把握し,対策を実施し,効果を検証し,新しい課題を把握――といった継続的なPDCAサイクルを回すことによってはじめて実効性が高まる。

「グリーンIT簡易診断ツール」を11月に公開

 さて,あなたの会社の「グリーンIT度」はどれくらいだろうか。ITproでは,調査会社のITRと共同で,Web版「グリーンIT簡易診断ツール」を開発中である。「環境対策を推進する組織体制」,「IT機器の省エネ取り組み状況」,「情報システムの省エネ管理体制」,「情報化のプロセス」,「システムの投資対効果」の5つの観点から分析・診断する。ぜひ自己診断を行って自社の立ち位置を把握し,取り組みを一歩前進させてほしい。

 ITproではそれに先立ち,「グリーンITへの取り組みに関するアンケート」を実施する。読者の皆様には,ぜひアンケートへのご協力をお願いしたい。調査結果は,「グリーンIT簡易診断ツール」の評価基準の設定に反映させていただく。

 また,アンケート結果に関して,詳しい分析・講評をお伝えする機会を設けたのでご案内する。2008年10月14日(火)に開催する「グリーンITフォーラム2008 Autumn」の特別講演(パネル討論)で,ITRの生熊清司シニア・アナリストに講演していただく。こちらにもぜひご参加いただきたい。

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