アイピーモバイルが2007年10月に返上した2GHz帯TDD方式バンド(アイピーモバイル跡地)の技術的条件が決まった。ただ肝心の周波数の再割り当て方針について,総務省は2009年1月ころまで先延ばしにする考えだ。

 総務省で議論が進んでいたアイピーモバイル跡地再利用について,7月29日開催の情報通信審議会でその技術的条件が決まった。モバイルWiMAXやIEEE 802.20 625k-MC(iBurstを含む)など5種類の技術方式が利用可能となった。これで周波数再割り当ての準備は整ったが,総務省は2009年1月ころまで先延ばしする考えだ。

 総務省は現在,第3.9世代携帯電話(3.9G)の議論を進めており,12月末に技術的条件を固める計画。その後2010年3月以降に空く1.5GHz帯を,3.9G向けの帯域として割り当てる予定だ。「2GHz帯TDDバンドと3.9G向けの1.5GHz帯のいずれもモバイル・ブロードバンドを実現できる。ならばまとめて募集したほうが都合がよい」(総務省移動通信課)。

 希望する事業者の意見陳述を10月末ころに実施した後,2009年1月ころに両帯域の免許割り当て方針案を出す予定。その後,電波監理審議会などを経て,2009年春以降に事業者募集,免許を割り当てる計画だ(図1)。

図1●アイピーモバイル跡地の2GHz帯TDD方式と3.9Gの利用を予定する1.5GHz帯の再割り当ては同時に実施<br>いずれも現行の3.5G以上の伝 送速度を実現可能なことから,同時に事業者を募集した方がよいと総務省が判断した。免許割り当ての方針案は2009年1月ころ,事業者の募集,免許の 割り当ては2009年春以降になる見込みだ。
図1●アイピーモバイル跡地の2GHz帯TDD方式と3.9Gの利用を予定する1.5GHz帯の再割り当ては同時に実施
いずれも現行の3.5G以上の伝 送速度を実現可能なことから,同時に事業者を募集した方がよいと総務省が判断した。免許割り当ての方針案は2009年1月ころ,事業者の募集,免許の 割り当ては2009年春以降になる見込みだ。
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京セラがCATV事業者と名乗り

 総務省が割り当て時期を先延ばしした理由は,2GHz帯TDDバンドの獲得を狙う事業者がこれまでほとんどいなかった点も大きい。2GHz帯TDDバンドは,携帯電話が使うFDD方式のW-CDMAなどを利用できない。こうした事情もあり,獲得の意向を示す既存事業者はいなかった。

 そんな中,京セラが2GHz帯TDDバンドを狙う姿勢を見せている。同社が開発した通信技術iBurstをCATV事業者に採用してもらいたいとの意向だ。免許を取得するのはCATV事業者であり,京セラはそれを支援する考えだ。

 もっとも現段階では採用を決めたCATV事業者はまだいないという。京セラと組んで売り込みを図る古河電気工業ブロードバンド製品部技術ユニットの西橋淳ユニット長は,「6月ころから営業活動を開始した。CATV事業者50社ほどから問い合わせを得ているが,まだスタートライン」と答える。

 さらにiBurstにはハードルがある。iBurstが狙うCATV事業者向けには,既に2.5GHz帯の地域WiMAXが用意されているからだ。西橋ユニット長は「全国で数百社のCATV事業者のうち,地域WiMAXの導入を希望しているのは40社程度。潜在市場は大きい」と強気の姿勢を崩さない。だが,各地域のCATV事業者の参入には,2GHz帯TDDバンドの割り当て条件を,地域WiMAXと同じ「地域バンド」にする必要もある。この点に関して総務省は「10月のカンファレンスでぜひ意見を述べてほしい」と前向きに検討する姿勢を示している。