ソニー 取締役 代表執行役社長 中鉢良治氏は2008年4月,日本OSS推進フォーラムの理事に就任した。日本OSS推進フォーラムはオープンソース・ソフトウエアの普及促進を目的とした産官の団体だ。2003年に発足して以来,NEC,日立,富士通,NTTデータなどシステム・インテグレーション系の企業が幹事となってきたが,家電メーカーであるソニーのトップが新しく幹事に加わった。ソニーはなぜOSS推進フォーラムに参加したのか。ソニーでLinuxを担当する同社技術開発本部 共通要素技術部門長 堀昌夫氏と技術開発本部 共通要素技術部門 システムソフトウェア開発部 テクニカルマーケティングマネージャー 上田理氏に話を聞いた。

ソニーの主要製品のほとんどはLinux搭載

 「ここにあるデジタル家電はすべてLinuxを搭載している」---ソニー本社応接室に展示されていた薄型テレビ,ハードディスク・レコーダー,デジタル・カメラを指差して堀氏はこう言った。「デジタル・カメラは一眼レフのαシリーズを除いて,全てLinuxを搭載するようになった。テレビも,(低価格モデルを主力にする新興国など)一部の国に出荷されている製品を除いて全てLinuxを搭載している」(堀氏)。ハンディカムもほとんどが,ウォークマンにも一部Linuxが搭載されている。

Linuxを搭載しているソニー製品の例。左が堀昌夫氏,右が上田理氏
Linuxを搭載しているソニー製品の例。左が堀昌夫氏,右が上田理氏
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 ソニーのWebサイトには,同社の製品に搭載されている,GNU GPL(GNU General Public Lisence)ライセンスのオープンソース・ソフトウエアをダウンロードできるページがある。このページを見ると,ビデオ編集機,コンポ....とあらゆる製品にLinuxが搭載されていることがわかる。「今や,ソニーの主要製品のほとんどにLinuxが搭載されている」(堀氏)。

 Linuxを広範に採用しているメーカーはソニーだけではない。松下電器産業グループも薄型テレビやHDDレコーダ,携帯電話などに,シャープも液晶テレビなどに,NECも携帯電話などに採用している。

 ソニーが最初にLinuxを採用したのは,2002年に発売したHDDレコーダーだった。「家電がネットにつながる中で,実績のあるネットワーク機能と豊富なアプリケーションを持つLinuxに注目した」(上田氏)。とはいえ,最初からソニー社内でLinuxが諸手を挙げて歓迎されたわけではない。起動にかかる時間や必要とするメモリー・サイズ,バッテリーを長持ちさせるための電源管理など,デスクトップやサーバーのOSとして発展してきたLinuxと組み込み機器が必要とする機能にはギャップも存在した。しかし,これらの課題はもうほぼ解決されてきた。「このCyberShotを例にとれば,起動に1秒かからない」と上田氏は実際に動かしてみせる。

 この短期間での大幅な進化を実現したのが,企業の枠を超えた技術者たちの協力だった。