名前登録でコンピュータ名が競合しないことが確認できたら,引き続いてコンピュータ一覧表示のための準備が行われる。具体的には,自分の所属するワークグループのマスター・ブラウザへ,自分のコンピュータ名を通知する。ここで使うのが「ホスト・アナウンスメント」パケットだ。

マスター・ブラウザと「ホストアナウンスメント」で通信

 マスター・ブラウザは,コンピュータ一覧表示の中心的な役割を果たすWindowsパソコンである。グループに所属するメンバーのパソコンの情報は基本的にマスター・ブラウザへ集まる(図5)。そして,マスター・ブラウザが作成したコンピュータ一覧情報を,それぞれのパソコンが参照することで,自分のワークグループにあるパソコンがわかるのだ。これはVistaパソコンがネットワークに参加しても変わらない。

図5●マスター・ブラウザの役割<br>ワークグループ(またはドメイン)内にどのような名前のコンピュータがあるかはマスター・ブラウザが一括して管理している。新たにWindowsネットワークに参加したパソコンはマスター・ブラウザの管理するリストに追加してもらうことで,他のパソコン上の一覧に表示されるようになる。
図5●マスター・ブラウザの役割
ワークグループ(またはドメイン)内にどのような名前のコンピュータがあるかはマスター・ブラウザが一括して管理している。新たにWindowsネットワークに参加したパソコンはマスター・ブラウザの管理するリストに追加してもらうことで,他のパソコン上の一覧に表示されるようになる。
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 Vistaも,従来のWindowsと同様に,自分と競合する名前がないことを確認すると,名前を登録するためのNetBIOSブラウジングのホスト・アナウンスメントのパケットを送信する(前回記事「Windowsネットワークへの参加(1)」の図2のNo.30のパケット)。このパケットのあて先IPアドレスはブロードキャスト・アドレスだが,あて先NetBIOS名(Destination name)は,"WORKGROUP<1D>"だ。<1D>というNetBIOS名サフィックスは,マスター・ブラウザを指している。つまり,このホスト・アナウンスメントは,WORKGROUPのマスター・ブラウザへ向けて送信されていることがわかる。

 図2では,ホスト・アナウンスメントのパケットは一つ送信されているだけだが,この後もコンピュータが稼働している間は決められた周期で繰り返し送信されていた。筆者が確認した限りでは,ホスト・アナウンスメントの送信周期は,XPと同じく最長12分間隔であった。このため,Vistaパソコンでも,XPと同じように,コンピュータ一覧への表示・消去のタイムラグはあるだろう

Vistaもマスター・ブラウザになる

 グループのマスター・ブラウザが見つからなければ,新しいマスター・ブラウザを選定する。Vistaはマスター・ブラウザになれるのだろうか? 答えはイエスだ。従来通りの選定の手順を踏んで,マスター・ブラウザになることができる。

 VistaパソコンVISTA-PC1(192.168.1.27)が,マスター・ブラウザ選定要求を出し,マスター・ブラウザになった時のパケットをみてみよう(図6)。No.66~No.69で,マスター・ブラウザ選定要求パケットをブロードキャストあてに送信している。このパケットに含まれる選定基準(Election Criteria)や起動からの経過時間(Uptime)を基に,マスター・ブラウザが選定される。

図6●マスター・ブラウザ選定時のパケット
図6●マスター・ブラウザ選定時のパケット
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 Vistaのブラウザ選定基準は,XPと同等だ。つまり,サーバーOSには選定で負けるが,XPとは選定基準では勝ち負けが決まらず,起動時間やコンピュータ名の選定要素で決まる。