新しい情報技術が次々と開発され発表されるが,これらの要素を自社システムにどのように位置づけるかは,情報システム部門の責任者に委ねられている。ハードウエアやソフトウエア,各種ツール類を選択するのは,システム部長やマネジャの重要な仕事である。その判断が正しければ,大きな成果を期待できる。しかし間違っていれば,システム構築過程で多くの困難に直面することが予想され,周囲にさまざまな影響を及ぼすことになる。

本記事は日経コンピュータの連載をほぼそのまま再掲したものです。初出から数年が経過しており現在とは状況が異なる部分もありますが,この記事で焦点を当てたITマネジメントの本質は今でも変わりません。

 オフィス用品の販売を首都圏で広範囲に展開するK社は,従来の販売方法を見直して効率的な営業を実現するための検討を進めていた。

 K社の売り上げの約80%は法人顧客すなわち得意先企業からのものだ。その半分近くを占める主要得意先については,それぞれ営業担当者が決まっている。彼らが定期的に顧客の購買担当者に注文を取りに回ったり,新製品の紹介を行ってきた。

 この営業スタイルは45年ほど前の創業時から続いている。この45年の間に,事務所がオフィスと呼ばれるようになり,快適性や能率向上が追求されるようになると,多くの競合相手がオフィス用品市場に参入してきた。そのような環境下でも長年にわたって地道に築いてきた営業活動が強さを発揮して,K社の業績は順調に伸びてきた。

 ところが昨年あたりから,状況が変わり始めた。ベテラン担当者が退職年齢を迎える一方で,優秀な若手を新規に採用するのも難しい。こうした事情で,従来の営業体制や販売方法を継続することが困難になってきた。

 追い討ちをかけるように,商品の多様化,取扱商品の多品種化が進んで,顧客からの注文に迅速かつ正確に対応することも難しくなった。顧客である企業側でも,事務用品の在庫を減らしたいという意向が顕著になり,発注タイミングは小刻みになり,発注量も少量化してきた。